Ferrari logo
Contact us


2019年5月29日、マラネッロ発 フェラーリは、ブランド初のPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)プロダクション・シリーズ最初のモデル、SF90 Stradaleの発表で、歴史に新たな一歩を刻みました。
このニューモデルは、あらゆるレベルで非常に優れており、プロダクション車輌としては、前例のない性能を発揮します。これは、正にパラダイムシフトです。出力1,000cv、パワーウェイトレシオ1.57km/cv、速度250km/hでのダウンフォース390kgという性能は、このセグメントのみならず、ブランド史上初めてV8がラインナップの頂点を極めたことを意味します。

モデルのネーミングは、その性能で達成した、真の意味を要約しています。スクーデリア・フェラーリ創立90周年のレファレンスは、フェラーリのレース・カーとロードカーとの強い絆を強調するものです。マラネッロで開発された最先端技術を見事にカプセル化したSF90 Stradaleはまた、フェラーリが、レースで培った知識やスキルを、いかに迅速にロードカーへ移転できるのかを完璧に示します。

SF90 Stradaleに搭載される90 V8ターボエンジンは、フェラーリ8気筒史上最高となる出力780cvを誇ります。残る220cvは、3基のエレクトリック・モーターによって供給されます。1基は、フォーミュラ1アプリケーション由来のMGUK(モーター/ジェエレーターユニット、キネティック)で、エンジンと新しい8速デュアルクラッチトランスミッションの間に搭載し、リア・ホイールを駆動します。残る2基は、フロント・アクスルに搭載され、左右のホイールを駆動します。この洗練されたシステムは、決してドライビング・エクスペリエンスを複雑にはしません。むしろ、その逆です。ドライバーは単に4つのパワーユニット・モードから1つを選択し、あとはドライビングに集中するだけです。V8、エレクトリック・モーター、バッテリー間のパワーのフローは、洗練された制御ロジックが担います。

SF90 Stradaleは、フェラーリのスポーツカーとして初めて4WDを搭載しました。これは、ハイブリッドのパワートレインが発揮する強力なパワーをフル活用するために必要な手段です。また、デザイナーに0-100km/h加速2.6秒、0-200km/h加速6.7秒という、スタンディング・スタートの新しいベンチマークの設定を可能にしました。

フェラーリの技術者は、ダイナミックコントロールのレンジをさらに広げる、フル・エレクトリック・フロントアクスル、RAC-e(電子コーナリング・セットアップ・レギュレータ)を導入しました。これは電動走行での動力を供給するだけでなく、2基のフロント・モーターが独立してトルクを制御し、トルクベクタリングのコンセプトを拡張するシステムです。ビークルダイナミック・コントロールに完全統合されたこのRAC-eは、トルクの分配を管理し、限界域でのドライビングを一層簡略化します。

RAC-eは、トルクベクタリングのコンセプト全体を統合、拡張し、ビークルダイナミクスの状態を常に監視して安定性を制御します。フロントのエレクトリック・モーターは、トルクを調整して操舵安定性を図ります。これにより、自信をもって限界域でのドライビングを簡単かつ安全に行えます。

このハイブリッドアーキテクチャーを導入する上でのチャレンジは、追加重量の管理でした。車全体の最適化と重量減少を徹底的に追求して解決を図りました。統重量、剛性、重心を考慮して最大限の性能を発揮させるために、SF90 Stradaleのシャシーとボディシェルは、すべて新しく、マルチマテリアル技術を導入して製造されました。

このようなハイブリッド車輌の開発には、いくつかの革新的な空力ソリューションが要求されます。また、パワーユニットの性能向上とともに、放熱の必要性も増えるため、放熱体の空力フローを徹底的に検討することが開発チームの任務でした。一方、ダウンフォースの効率的な増加、全ての速度および運転状況における絶大な安定性をもたらすための、新しいソリューションが求められました。

特に特徴的なデバイスは、斬新的なシャット・オフ・ガーニーです。これは、フェラーリが特許を取得したアクティブ・システムで、車体後部に搭載され、横方向のダイナミック荷重が低い高速走行時でのボディ上面気流を制御し、コーナリング、ブレーキング、方向変換時にダウンフォースを強化します。

スタイリングに関しても、この新型車輌は画期的です。20年前、360 Modenaに導入されたミッドリア・エンジン・スポーツ・ベルリネッタのプロポーションを完全に書き換えました。それに代わって、近年のフェラーリ・スーパーカーからインスピレーションを得ています。好例として、コックピットは、ドラッグ低減を図るべく、これまでよりも前面投影面積が小さくなり、位置が車体前方に移動しました。これらの変更は、乗車快適性を一切犠牲にしていません。

また、この車で初めて、レーシングから生まれた「目は路上、手はステアリングホイール」という思想が中心に置かれ、インテリアのエルゴノミクスとスタイリングに大変革をもたらしました。その結果、HMI(ヒューマンマシンインターフェース)とインテリア・レイアウトのコンセプトは、これまでのモデルとは完全に異なっています。

もうひとつの大きな技術革新は、ステアリングホイールです。タッチパッドとハプティック・ボタンによって、ドライバーは、親指だけで車の様々な機能を制御できるようになりました。中央のインストルメントクラスターは、完全デジタル化され、ステアリングホイールに設置したコントロールで全ての設定、操作ができる16インチ曲面HDスクリーン(市場初)を備えています。

センタートンネルは、改善されたエルゴノミクスが、過去の要素と融合しています。それはオートマチックギアボックス・コントロールです。フェラーリ伝統のマニュアル・シフトゲート然としたグリル・スタイル機能によって作動します。このように現代と過去の巧みな融合が、新しいフェラーリを未来へ向けるのです。

またSF90 Stradaleとともに、モデル名が付き、パーソナライズされた完全キーレス技術によるイグニッション・キーがデビューします。これは、この先徐々に全てのモデルに導入されるもので、センタートンネルの特別なコンパートメントによって、車のスタイリングに欠かせない要素となります。

フェラーリ・ロードカーに採用されている、伝統の長方形のPrancing Horse(跳ね馬)バッジをフォルムと色で表現したスポーティ・バージョンに加え、よりエレガントな金属色バージョンも用意しています。

フェラーリとして初めて、標準仕様車と、スポーツ指向仕様車のふたつのバージョンをご用意し、お客様は、どちらかのバージョンをお選びいただけます。

Assetto Fiorano仕様には、GTレーシング由来の大幅なアップグレード要素として、マルチマチック・ショック・アブゾーバー、カーボンファイバー(ドアパネル、アンダーボディ)、チタン(スプリング、エグゾーストライン全体)など、高性能素材を採用した超軽量コンポーネントが含まれており、これによって30kgの軽量化を達成しています。もうひとつの異なる要素は、速度250km/hで390kgのダウンフォースを発生する、高ダウンフォース・カーボンファイバー製リアスポイラーです。Assetto Fioranoには、ドライ・トラックでの性能向上に向けて、専用に開発されたMichelin Pilot Sport Cup2タイヤが装備されます。標準タイヤに比べて、よりソフトなコンパウンドと浅いグルーヴが特徴です。

パワートレイン
SF90 Stradaleは、PHEV(プラグイン・ハイブリッド・エレクトロリック・ビークル)アーキテクチャーを採用したフェラーリ初のモデルで、内燃エンジンと3基の電動モーターを統合して駆動します。電動モーターの内の2機は、フロント・アクスルの左右に独立して搭載され、残る1基は、後部のエンジンとギアボックスの間に設置されます。
内燃エンジンとエレクトリック・モーターは、相乗効果によって、1,000cvという途方もない出力を発揮します。これによってSF90 Stradaleは、性能および革新的技術の面で、フェラーリ・ラインナップのみならず、すべてのコンペティターに当てはまる、全く新しいベンチマークを打ち立てました。

内燃エンジン
SF90 Stradaleに搭載されるV8ターボエンジンは、780cvという出力によって、このような構成で発揮できる性能の限界をさらに高めました。開発の起点は、先日、国際エンジン・オブ・ザ・イヤー賞に、史上空前となる4年連続でノミネートされた488ファミリー・エンジンです。
このセグメントで最高の比出力195cv/lと合わせて、エンジンは6,000rpmで800Nmのトルクを発生します。この並外れた結果を達成するために、フェラーリのエンジニアは、エンジンのいくつかの部分の改良に集中しました。始めに取り組んだのは、3,902ccから9,990ccへの排気量の増加で、ボアを88mmに拡大してこれを達成しました。
吸気および排気システムは完全に再設計されました。センターインジェクターを装備した、より狭い新型シリンダーヘッド、そしてフェラーリV8としては初採用となる350バールGDIが特徴です。
内部流体力学を改善させるために、直径をさらに拡大した吸気バルブを導入し、ダクトの水平位置が、全てエンジンヘッドの高さに統一されました。ターボチャージャー・アッセンブリーの位置は下げられ、テールパイプがリアバンパーの上に設置されていることで分かるように、排気ラインの位置は高くなりました。
ターボでは、キャタライザーの加熱改善のための電子制御ウェイストゲートと、流体力学の最適化を図るための新しい渦構造のコンプレッサーを搭載しています。
再設計の対象は、決して流体力学だけではありません。レイアウトの合理化によって、より低い重心(小径フライホイールの採用により)、総重量の削減(排気マニフォルドの素材をスチールからインコネル製に変更)を実現しました。排気システムの再設計では、音質に細心の注意が払われました。その結果、周波数全域にわたってフルで豊かな倍音を奏でます。

ギアボックス
SF90 Stradaleは、完全再設計の8速オイルバス・デュアル・クラッチ・トランスミッションを搭載しています。新しいギア比と動力伝達の効率向上によって、性能を犠牲にすることなく、都市部および高速道路での燃料消費量を大幅に削減しました(WLTPサイクルでは-8%)。また、サーキット走行での効率は、1%向上しています。
レイアウトの最適化に関しては、ドライサンプの採用、そして従来のギアボックスに比べて20%小径となったコンパクトなクラッチ・アッセンブリーの導入によって、搭載位置が15mm下げられました。その結果、ランニングギアの重心もそれだけ低くなりました。
8速ギアが追加され、最大トルクが900Nmに増大(現行の7速に比べて20%増)したにも関わらず、ギアボックスの総重量は実に7kg軽くなりました。後退は、フロントのエレクトリック・モーターで行うため、本来必要だったリバースギア・ホイールがなくなり、これをを含めると、重量差は10kgまで拡大します。
新しいクラッチの性能は、さらに35%向上し、ギアシフトで最大1200Nmのダイナミック・トルクを伝達します。新世代の作動油圧により、統合クラッチ・フィル・タイムは488 Pistaの300ミリ秒から200ミリ秒まで短縮されました。

エレクトリック・モーター
SF90 Stradaleは、合計で220cv(162kW)を発生する3基のエレクトリック・モーターを搭載しています。高性能Li-ionバッテリーが全てのモーターに電力を供給し、完全電動のeDriveモードではフロントアクスルのみで25kmの走行距離を保証します。内燃エンジンが稼働していてない状態では、独立した2基の前輪モーターが最高速度135km/h、走行方向の加速は≦0.4gに制限されます。後退はeDriveモードのみで行うため、V8を使わずに低速での操作が可能です。加速時に最大限の性能を発揮させるために、フロントモーターはローンチ・コントロール・ストラテジーと統合されています。

ファンクション・モード
内燃エンジンとエレクトリック・モーターの協働で送り出されるい衝撃的な1,000cvという出力は、性能面でSF90 Stradaleをラインナップの頂点に押し上げました。制御ロジックは、ドライバーが選択したユーザープロファイルに応じて、効率または性能のどちらかを優先してパワーフローを最適に管理します。
ステアリングホイールに特別装備したエレクトロニック・ビークルダイナミクス・モードセレクター、eManettino(マネッティーノと同等のシステム)で、ドライバーは、4つの異なるパワーユニット管理モードが選べます。 eDrive: 内燃エンジンは停止したままで、トラクションは完全に電動フロントアクスルが担います。バッテリーがフル充電の状態から、距離25kmまで走行できます。このモードは、都市部の走行など、フェラーリV8のサウンドが気になる状況に適しています。
Hybrid: 標準的なドライビング・モードで、全体の効率性を最適化するために出力が管理されます。内燃エンジンを稼働させるか消すかは制御ロジックが自己で判断します。エンジンが稼働していえれば、最高出力でドライブできるため、ドライバーの要求があれな、いつでも強力なパフォーマンスを発揮します。
Performance: Hybridと異なり、このモードではICE(内燃エンジン)が稼働し続け、効率よりもバッテリーの充電が優先されます。パワーが必要であれば、瞬時にフル活用できます。このモードは、ドライビングとステアリングホイールを握る楽しさに集中したいような状況に適しています。
Qualify: これは、システム全体の最高出力が発揮できるモードです。電動モーターは、ポテンシャルを最大化(162kW/h)して稼働します。制御ロジックはバッテリー充電よりもパフォーマンスを優先させます。

ビークルダイナミック
エンジンの出力増加を目的に、膨大な時間をかけて努力しても、ダイナミクスの研究や、SF90 Stradaleのラップタイムを改善するための、あらゆるソリューションを開発せずには意味がありません。同時に、これらの開発によって、誰もが車のポテンシャルを最大限引き出してドライブする楽しみをもたらしました。
新しいハイブリッド・アーキテクチャ―では、車輌に搭載する多数の制御ロジックの徹底的な統一作業が必要でした。関係する3つのエリアは、高電圧システムコントロール(バッテリー、RAC-c、MGUK、インバーター)、エンジンおよびギアボックス・コントロール、そしてビークルダイナミクス・コントロール(トラクション、ブレーキ、トルクベクタリング)です。
これらのエリアを、車輌の既存制御ロジックと統合する作業から生まれたのが新しいeSSC(エレクトリック・サイドスリップコントロール)です。eSSCは、4輪すべてのトルクに、3つの革新的なダイナミック規制および分配ストラテジーを提供します。
- エレクトリック・トラクションコントロール(eTC):ICEとエレクトリックともにトルクの供給を最適に管理し、各ホイールにドライビングコンディションとグリップ要件に合うように分配します。
- ABS/EBDによるブレーキ・バイワイヤ制御:ブレーキトルクを油圧システムとエレクトリック・モーターとの間で分配させ(ブレーキ・トルクブレンディング)ブレーキング時における回生エネルギーの回収を可能にし、性能とブレーキ・フィールを妥協せず、逆に向上させます。
- トルクベクタリング:コーナリングでフロントアクスルのイン側とアウト側ホイールのエレクトリック・トラクションを個別に管理し、コーナー脱出時のトラクションを最大化します。容易に、しかも自信をもっての高性能ドライビングを可能にします。

縦方向ダイナミクス
RAC-e 電気車軸とトラクション・コントロール eTCを4つの車輪に導入するおかげで、前輪が届ける追加のグリップが加速時でも使えます。全体に向上したグリップ性能と低速におけるエレクトリック・モーターのパワー伝送の向上により、SF90 Stradaleの縦方向加速は、大幅に改善され、スタンディング・スタート加速の新しいベンチマークを設定しました。
より高いギアでの高速走行時にも、最大トラクション状況下におけるエレクトリック・モーターの貢献によって、ICEのレスポンスタイムを短縮し、縦方向の加速度、すなわちパフォーマンスが大幅に向上しました。
新ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムは、エレクトリック・モーター(ジェネレーター)でダイナミック・エネルギーを回収し、ドライバーに気づかれることなく油圧とエレクトリック・ブレーキによるエネルギーを電子制御でミックスします。一般的なブレーキ状況下では、エレクトリック・モーターによるエネルギー回収が優先されます。ハード・ブレーキングでは、油圧システムが介入して電気システムを補助します。

横方向ダイナミクス
eSSC 制御ロジックはまた、前輪のRAC-eモーターに割り振られるトルクを管理し、トルクベクタリングの概念から派生した電子制御を管理します。コーナリング時にイン側とアウト側のホイールへのトルクをダイナミック・コンディションによって割り振り、最大限の性能強化と容易なハンドリングを実現します。

シャシー
車体にハイブリッドシステムを搭載するにあたり、増加した270kgは、出力増強(220cv、システム自体のパワーウェイトレシオは1.23kg/cv)によって相殺できましたが、総重量を2,570kgに抑えるには、徹底的な研究が必要でした。結果として、パワーウェイトレシオは記録的な1.57kg/cvとなりました。
シャシーは、完全再設計です。マルチマテリアルとマルチテクノロジーのアプローチによって、新型パワーユニットとAWDの導入に伴う応力の吸収に対応しています。新しく導入された技術の例として挙げられるのは、従来のリブ付きケーシングに代わって採用した中空ケーシングです。その他新しいソリューションとしては、キャビンとエンジンを隔てるフルカーボンファイバー・バルクヘッドや、2つの新しいアルミニウム合金などがあります。アルミ合金のひとつは、主にその1つは、板金で使われている高強度7000シリーズ合金です。結果として、SF90 Stradaleのシャシーは、従来の車体に比べて曲げ剛性の20%強化、ねじり剛性の40%強化を、重量の増加無しで実現させました。これは車のダイナミクスに多大なメリットをもたらします。またNVH(騒音・振動・厳しさ)の特性は、フロアパンに使われている「quiet aluminium(静かなアルミニウム)」として知られている新合金の採用によって、改善されました。

エアロダイナミクス
SF90 Stradaleのエアロダイナミクス特性を創出するにあたって、最大のチャレンジは、フェラーリとコンペティターともに、実現していない高いレベルのダウンフォースとエアロダイナミクス効率を達成すことでした。これには、全てのサブシステムと新型パワーユニット(内燃エンジン、エレクトリック・モーター、バッテリー、インバーター)が常に最適な状態で稼働することが必要でした。
いつものように、エアロダイナミクス部門は、フェラーリデザインと密接に作業を進めました。その結果、ダウンフォースと効率数値は、同セグメントで匹敵する車輌が存在しないほど群を抜くものとなりました。これもまた、フェラーリならではの方法、単に部品を追加するのではなく、車のフォルムを細心の注意を払って彫刻した結果です。
性能の面で得られた結果は実に見事です。250km/hで390kgのダウンフォースを獲得したことで、SF90 Stradaleは、高性能ロードカーのダウンフォースと効率の新しいベンチマークを設定しました。

熱エアロダイナミクス
成功する車のレイアウトを定義するには、流体に対する正しい放熱処理が第一歩です。この場合、あらゆる走行状況で空気抵抗やダウンフォース値に悪影響なく1000CVを効率的で尚かつ妥協無しで送り出すことが目的です。
内燃エンジン、ギアボックス、ターボ過給空気、バッテリーパック、エレクトリック・モーター、インバーター、充電システム、ブレーキなど、すべてに冷却が必要です。エンジンベイには、約900℃の熱を生む内燃エンジンシステムだけでなく、熱に敏感な電子部品が搭載されています。
内燃エンジンとギアボックス(高熱回路)の冷却液は、フロントホイールの前に搭載した2基のラジエターで冷却します。このラジエターからの放熱は、車体の側面でなくアンダーボディの横のエリアに誘導されます。したがって、側面の空気の流れはリアホイール前部のエアインテークに入る段階で冷却されているため、インタークーラー・ラジエターの効率は向上します。
エレクトリック・モーターとインバーターは、車体前部のラジエーターとフロントバンパー中央のインテークから、別の回路で冷却されます。
最後に、ブレーキの冷却回路は、さらに強化された車輌の性能に合わせて、完全に再設計されました。ブレンボと共同で、フェラーリは、ロードカーで初採用となる新型ブレーキキャリパーを開発し、前輪に採用しました。このキャリパーと一体になった空力付属部分が、ヘッドランプ直下のフロントバンパーに設置された専用のインテークから強力な流を効率よくブレーキパッドとディスクへ流します。一方リアブレーキは、リアホイール付近のアンダーボディに設置された2つインテークで取り込んだ気流によって冷却されます。

リヤ・エアロダイナミクス
ボリュームデザインに関して、SF90 Stradaleのエンジンカバーは、車体の上下の気流による後部での干渉を改善してドラッグを最小限に抑えるために、非常に低く抑えられています。
エンジンカバーの後端部には、2つの、吊り下げ式エレメントが装備されています。ひとつは固定されており、3つ目のブレーキライトが組み込まれています。もうひとつは、フェラーリが特許を取得した、前方がウエッジシェイプの可動コンポーネントで、シャットオフ・ガーニーと呼ばれています。これは、車体装備コンポーネントのなかで、最も革新的なダウンフォース管理デバイスです。
都市部、または最高速度での走行時には、2つの部分がエンジンカバーの上に揃えて吊り下げられ、可動ウェッジが固定エレメントへの効率的なフェアリングとして機能し、シャットオフガーニーの上下に空気を流します。
大きなダウンフォース条件(コーナーでの走行、ブレーキング、急激な方向転換など)では、可動エレメントが一対の電動アクチュエータによって下降し、下側の吹き出し部分を閉じ、固定エレメントを露出させます。強力なノルダーで覆われた広い積載面:システムによって生み出される追加ダウンフォースは、300km/hで100kgです。
システムは、最も効率的な構成を設定するために、速度、加速度(横方向および縦方向)、ドライバーの入力などのパラメーターを1秒間に数百回チェックする高度な制御ロジックによってこれを制御します。

フロント・エアロダイナミクス
後部のダウンフォースをバランスさせるのは車体前方にある、複雑で最適化されたボルテックスジェネレータのシステムです。これはフェラーリ初のデバイスでではありませんが、SF90 Stradaleでは、徹底的に磨きをかけられました。シャシーの前部は、ボルテックスジェネレータが配置されている中央部分に比べて15mm上げられ、取り込む空気の量とそれによる効果が強化されます。
フロントバンパーは、2つに分割されており、それぞれがウィングとして機能します。上部とボンネットの間には明確な凹みがあり、気流を局所的に圧縮します。この部分は、フロントホイール前方の2つのディフューザーとともに機能し、フロントアクスルへのダウンフォースの発生に貢献します。

ブロウン・ジオメトリー構成の鍛造ホイール
鍛造ホイールの形状には、特化したエアロダイナミック研究が適応され、空力ソリューションに自由をもたらす製造技術が活用されました。ホイールの構成にある外側の溝に放線状の要素が加わり、これらはスポークとの間に一定の間隔を置くことで翼断面として働きます。その結果ホイールはローターブレードのように機能し、ホイールアーチ内部からの流れを効率的に管理します。これによって次の2つの効果が得られます:
- ホイールアーチからの排気が促進され、フロントディフューザーを流れる気流に良い影響を与えるとともに、フロント・ダウンフォースを強化します。
- ホイールリムから排出される気流は、進行方向と一致しているため、移動方向に対して斜めに出る気流によって生じる偏差を抑え、車のCd値を低減します。

デザイン
性能と技術の観点から、SF90 Stradaleは、最も先進的な車といえます。エクステリアのスタイリングは、その発想からインスパイヤされています。究極のスポーツカー、フェラーリ初のプロダクション・スーパーカーとしての使命を表す、先進かつ革新的なデザインです。
フェラーリデザインは、フロント、センター、リアのボリュームの割合を完全に見直し、過去20年にわたってフェラーリが維持してきたミッド・リアエンジンのプロダクション・ベルリネッタのフォルムを革命的に進化させたのです。
目的は、Prancing Horse(跳ね馬)のロードカーに前例のない性能を発揮する、最先端技術による究極の車をデザインすることでした。SF90 Stradaleは、今日のF8 Tributoに代表される、ミッド・リア・エンジン・クーペと、LaFerrariなどのスーパーカーの中間に位置し、先進的なコンテンツが豊富な究極の技術を誇る車の新しい基準となるモデルです。

エクステリア
フラビオマンゾーニ率いるフェラーリ・スタイリングセンターのデザインチームは、キャビンをミッドマウントエンジンの前に配置したSF90 Stradaleのアーキテクチャーによって、完璧なプロポーションを有する、真のスーパーカーを創り上げました。
よりコンパクトなオーバーハング(特にリアはフロントよりも短い)と、キャビンの前方へのシフトによって生まれたキャブ・フォワード構成は、エンジンがミッド・マウントであることを強調します。
コンパクトなドーム・フォルムのキャビンは、航空機のコックピット感覚で、どれほど前に配置されているのかは、リアを囲むボディーカラーの2つフライング・バットレスのフォルムによって強調されます。
他の特徴的なソリューションは、L字型のフォルムはそのままに、内側をブレーキ・エアインテークと統合し、特徴的なC字型となった細いスリットデザインのヘッドライトです。これは、車の正面に独創的で未来的な魅力を与えます。
また、フェラーリとして初となるマトリックスLEDヘッドランプ技術によるアクティブビームコントロールが、あらゆる運転状況下での視界を向上します。
車のリアでは、エグゾーストラインのレイアウトを最適化した結果、設置位置が高くなったエグゾーストパイプが目を引きます。パワートレインは、これまでのの車に比べて大幅に搭載位置が低くなったため、車のテールも低くすることができました。またもう一点過去のベルリネッタに見られたスタイリングとの相違点は、リアスクリーンのプロフィールが、ルーフからバンパーにかけてのラインに沿ってないことです。この途切れたモチーフは、スクリーンと冷却グリルのギャップにも見られます。
テールライトは、フェラーリ伝統の丸形から一段と進化しました。魅力的な横に長い輪がテールライトに水平イメージをもたらし、車輌のテールの高さを視覚的に低く見せます。

インテリア
SF90 Stradaleのエクステリアのポイントは、フォルム、技術、そしてパフォーマンスのシームレスな統合を強調していました。インテリアは更に革命的です。明確な目的は、まったく新しいデザインの方向性を導くコックピットを創り上げることでした。これは、今後のフェラーリの全ラインナップに引き継がれます。
インターフェースのコンセプトに関して、デザイナーは未来的なアプローチを取り、特にインターフェイスを重視した航空機のようなラップアラウンド・コックピットを創出しました。これはさらなる車とドライバーとの一体化を強調します。
事実、SF90 Stradaleがもたらす進化は、フォルム、そしてコンテンツに置いても画期的な飛躍を遂げ、ヒューマン・マシン・インターフェースを完全デジタル技術で更新しています。
フェラーリとして初めて、中央のインストルメント・クラスターは、ひとつの16インチ・デジタルHD画面で、読みやすさの重視から、ドライバーに向かって湾曲しています。またF1スタイルのラップアラウンドコックピット感覚を強調しています。このようなスクリーンがプロダクション車輌に使われるのは、これが初めてです。
エンジンとモーターがオフ状態となると、インストルメントは黒に変わり、コックピットの素晴らしくミニマリストな印象を際立たせます。フェラーリの伝統に従って、デフォルト画面の中央には、大きな円形レブカウンターが配置されています。レブカウンターの両端にはナビゲーション画面とオーディオ・コントロールが設置されます。
「手はステアリングホイールに」の思想から生まれたヒューマン・マシン・インターフェースは、全てのフェラーリF1車輌に採用されており、ロードゴーイング・スポーツカーにも徐々に移転されて来ました。SF90 Stradaleのステアリングホイールは、レースの世界からの移行プロセスを完成させたものです。さらに、ステアリングから手を離さず、車のほぼ全ての機能をコントロールできる、タッチコマンドの導入によって、新たな時代の幕が開きました。
伝統的なコントロールとしては、すでに古典的となったステアリングホイールに搭載のヘッドランプ・スイッチ、ワイパー・スイッチ、インジケーター、そしてドライビングモード用のマネッティーノがあります。
新しいタッチコントロールでは、右スポークのパッドはコンパクトでありながら機能的で、センタークラスター画面のナビゲートに使います。左スポークには音声およびクルーズコントロールが設置されています。もうひとつ、特徴的なコントロールは、クルーズコントロール用の回転式スイッチです。これは、F1から直接導入されたソリューションです。中央エリアの左下に装備した4つのボタンでパワーユニットのモードを選択します。
もうひとつ斬新的なHMIの一部がヘッド・アップ・ディスプレイです。あらゆるデータをフロントガラスに映し出します。運転中に気を散らないように、ドライバーの視野内に現れます。
フェラーリ・スタイリングセンターのデザイナーにとって、SF90 Stradaleのインターフェイスは、クリエイティブ感に満ちたプロジェクトでした。キャビン内の画面を絵画のキャンバスと解釈し、ここに車の機能とコントロールを搭載しました。SF90 Stradaleの画面のグラフィックは3D効果を生むようにデザインされています。特に電源入力時や画面の切り替えにおけるトランジションが魅力的です。
この新コンセプトのHMIと並んで、もうひとつの主要テーマは、キャビンのトンネルエリアに装備したインターフェイスです。この「ブリッジ」に配列したF1コントロールは、最近のフェラーリを最も象徴するデバイスです。これらは完全に再設計されました。現代的なメタル・プレートに設置されたデザインもまた、過去の象徴的な特徴である伝統のシフトゲートを想起させます。

7年メンテナンス
卓越した品質基準と、さらなるカスタマー・サービスの充実を目指すフェラーリでは、SF90 Stradaleに7年間の純正メンテナンス・プログラムをご用意しております。このプログラムは、最初の車輌登録から7年間にわたり、お客様のフェラーリのパフォーマンスと安全性が最高の状態で維持されるべく、すべての定期メンテナンスを保証するフェラーリならではのサービスです。
この特別なサービスは、保証期間内であればオーナー・チェンジされても継続されるため、認定中古車を購入されたお客様も、長期間安心してフェラーリ・ライフをお過ごしいただけます。定期メンテナンス(20,000kmごと、もしくは毎年1回。走行距離制限なし)では、マラネッロのフェラーリ・トレーニング・センターで研修を受けた有資格者による「純正スペアパーツ」および最新の診断テスターを使った詳細な検査を受けていただけます。これは純正メンテナンス・プログラムの魅力のひとつです。
このサービスは、全世界の市場で展開するオフィシャル・ディーラー・ネットワークにてご利用いただけます。マラネッロで製造された車輌は、いつの時代もテクノロジーとスポーツ性を象徴する存在であり続けています。その優れた性能と素晴らしさを維持することを願うお客様に向けて、フェラーリはこれまで展開してきた幅広いレンジのアフターセールス・サービスに加えて、この純正メンテナンス・プログラムを導入し、さらなるサービスの向上に努めています。


主要諸元

内燃エンジン

タイプ 型式 90° V 型 8 気筒ターボ
総排気量 3,990 cc
最高出力* 780 cv/7,500 rpm
最大トルク 800 Nm/6,000 rpm
比出力 195 cv/l
最高許容回転数 8,000 rpm
圧縮比 9.5 : 1

ハイブリッドシステム

最高出力 1,000 cv
最高出力エレクトリック・モーター 162kW(220cv)
バッテリー容量 7.9 kWh
最大電力走行レンジ 25 km

サイズ & 重量

全長 4,710 mm
全幅 1,972 mm
全高 1,186 mm
ホイールベース 2,650 mm
フロントトレッド 1,679 mm
リア・トレッド 1,652 mm
乾燥重量** 1,570 kg
前後重量配分 45%フロント - 55%リア
トランク容量 74 L
リアシェルフ容量 20 L
燃料タンク容量 68 L(2リザーブ)

タイヤ

フロント 255/35 ZR 20 J9.5
リア 315/30 ZR 20 J11.5

ブレーキ

フロント 398 x 223 x 38 mm
リア 360 x 233 x 32mm
トランスミッション&ギアボックス 8速、F1デュアルクラッチトランスミッション
電子制御 eSSC: E4WD(eTC,eDiff3),SCME-Frs,FDE2.0,EPS,高性能ABS/EBD with エネルギー・リカバリー

パフォーマンス

最高速度 340 km/h
0-100 km/h 加速 2.5 秒
0-200 km/h 加速 6.7 秒
乾燥重量/パワー 1.57 kg/cv
フィオラーノ・ラップタイム 79 秒

燃料消費/CO2 排出量

ホモロゲーション取得申請中


* オクタン価 98 ガソリン使用

**追加オプション装備車