2019年9月9日、マラネッロ発 フェラーリは、史上最も成功したミッドリアにV8を搭載した新世代のドロップトップスポーツカー、F8 Spiderを発表しました。
Ferrari F8 Spiderは、ベルリネッタのF8 Tributoと並行して設計され、カテゴリーをリードするモデルのラインを大きく変える可能性のある、Prancing Horse(跳ね馬)ならではのコンパクトで効率的なRHT(リトラクタブルハードトップ)を備えています。
F8 Spiderは、1977年に308GTSで始まったオープントップV8のエクスクルーシブな権威あるシリーズ最新のモデルです。488 Pista Spiderほどアグレッシブではありませんが、同カテゴリーの488 Spiderよりもスポーティーに仕上げられています。
その結果、F8 Spiderは、「オープン・エアー」スポーツカーの扱いやすいパフォーマンスと優れたハンドリングの面で新たなベンチマークを設定し、かつてないほど満たされるドライビング・エクスペリエンスをもたらします。実際に優れたハンドリング・ダイナミクスと驚くほどの快適性が見事に融合しています。このフェラーリ・スパイダーは、史上最も賞賛され続けている8気筒エンジンの特性と唯一無二のドライビング・プレジャーを兼ね備えています。
搭載されるV8エンジンは、ターボエンジンのみならず、あらゆるタイプのパワーユニットの性能レベルを、かつてないほどの高さに引き上げました。このエンジンは、4年連続( 2016年、2017年、2018年、2019年)で「インターナショナルエンジンオブザイヤー」に輝き、過去20年間で最高のエンジンに選ばれた賞の歴史において比類のない素晴らしい偉業を成し遂げたV8の進化版です。
F8 Spiderの最大の成果は、このV8のユニークで非常に特別なサウンドを保持しつつ、ターボラグをゼロに抑えて瞬時にパワーを発揮することを実現させたことです。この驚異的なパフォーマンスと、驚くほど楽なハンドリングは、サーキットで培われた一連の革新的なエアロソリューションをデザインに融合させることで可能となりました。
マラネッロで生産されるすべての新モデルの使命は、新しいデザイン機能を搭載して、すべての面で先代モデルを上回ることです。エンジニアとデザイナーが常に直面する課題は、最先端ソリューションを導入し、新たなエクセレンスを設定することにより、独自の創造的な限界と技術の限界を押し広げることです。その努力は、再びこの新モデルで素晴らしい効果を発揮させています。
488 Spiderに替わるF8 Spiderは、諸元のすべてを改善させています。先代モデルより最高出力50cvをも向上させ、加えて20kgの軽量化も実現させています。究極の488 Pista Spiderと比べても、20kg重いだけです。F8 Spiderは、空力効率も大幅に向上させており、サイドスリップ・アングルコントロール・システムは最新の6.1バージョンを搭載しています。
エンジン
自動車界において、フェラーリのV8エンジンは、軽快さとドライビング・プレジャーの代名詞となっています。その特徴はミッドリア・マウントの2シーターという点です。フェラーリはこの構成を完成させるために40年もの歳月を費やし、重量バランスとハンドリング・ダイナミクスに磨きをかけてきました。
このV8エンジンの諸元は並外れています。排気量3,902ccのユニットは出力720cv/8,000rpmを誇り、さらに185cv/Lという比出力も見事です。トルクはすべてのエンジン回転数で強化されており、最大トルクは770Nm/3,250rpmです。
現在のフェラーリV8は、洗練されたソリューションを集結した技術の最高傑作です。そのパワーユニットは、スムーズな回転上昇、無限の加速とゼロターボラグ、刺激的なサウンドを奏でる新型エグゾースト・システムなど、すべてのマラネッロ製エンジンの典型的な特徴をさらに強化しています。
この新型車は、ドライバーに純粋な情熱をもたらします。瞬時に発揮可能な出力にはビークルダイナミクス・ソリューションが貢献しています。これによってマネッティーノの「RACE」ポジションで最新バージョンのフェラーリ・ダイナミクス・エンハンサー(FDE+)を作動させることが可能となり、ドライバーは限界域でのパフォーマンスに簡単に到達してコントロールできるようになりました。
また、488 Spiderに比べて50cvの出力強化を図るべく、新しいエアインテークラインは、488 Challengeのラインをダイレクトに継承したタイプが採用されています。F8 Spiderではエアインテークをサイドからリアに移し、ブロウンスポイラーの左右に設置した上でインテークプレナムに直結させています。これにより、損失を大幅に低減しつつエンジンへの吸気量を増やし、出力増加を図っています。さらに、リアスポイラーの形状による動圧の増加も吸気に貢献しています。
アダプティブ・パフォーマンス・ローンチは、車輌の加速時にグリップを分析し、電子制御によって路面のグリップレベルに合わせて伝達トルクを最適化し、ホイールの空転を最小限に抑え、加速を最大化します。
レブリミッターの「ウォール・エフェクト」戦略は、アグレッシブな特性のエンジン性能面での飛躍的前進です。高回転域において、レブリミットに向かって徐々に回転を抑えるのではなく、レッドラインの8,000rpm到達と同時に瞬時に回転を切ります。これによってパワーオンのダイナミック・ドライビング状況下で利用可能な出力を最大化することでラップタイムの向上を図ります。
今回のモデルで再び採用された戦略は、大成功を収めた全ギア対応のフェラーリ・バリアブル・トルクマネージメントです。トルクを車両の究極のスポーツ精神に合わせるべく、トルクカーブを再設計し、一貫してスムーズかつパワフルな加速感をレッドラインまでもたらします。最大トルクは、488 Spiderよりも10Nm太く、低回転域での利用も可能です。
F8 Spiderのエンジンは、488 Spiderに比べてパワーユニット重量を18kg削減した非常に効率的な488 Pistaの軽量化ソリューションも継承しています。チタン製コンロッド、クランクシャフト、フライホイールなどの回転部質量を削減したことで、ドライバーはギアシフトや低速ギアでの加速、急発進時などの際にレブカウンター針の飛動を目にできるほどエンジン回転速度は急激に上昇し、乗車感覚はさらにスポーティーになりました。このような回転部質量の軽量化によって慣性は17%削減されました。
488 Challenge由来のインコネル製エグゾーストマニホールドだけでも9.7kgのエンジン軽量化に貢献しています。エグゾーストのレイアウトは、ターボからテールパイプに至るまで全般にわたって大々的に改修され、この特定の車に完全にマッチしたユニークなサウンドが創出されました。その結果、音響、音質ともに至高の紛れもないエンジン・サウンドを奏でます。また、エグゾーストラインには、新規の公認審査要件に適合する新しいガソリン粒子フィルター(GPF)も装備されています。
デザイン
フェラーリ・スタイリング・センターによってデザインされたF8 Spiderは、フェラーリの重要な特徴である高性能と究極の空力効率を盛り込み、強調する新たなデザイン原則の方向性を創出したF8 Tributoを継承しています。
スパイダー・モデルを設計する際、ルーフ・トップの選択によって全体的な外観の基本が決まります。ここ数年フェラーリは、快適性を考慮してハードトップを採用しています。したがってF8 Spiderのフォルムのラインは、RHT(リトラクタブル・ハードトップ)を中心に創られています。
デザイン全体で重要視したことは、ボディとルーフの分離ラインを従来のベルトライン(搭乗者の肩の高さ)からBピラーの上へ移行させることでした。これによってトップは、一層コンパクトで平坦になりました。その結果、トップを2パーツに分割してエンジン上部に収容することができます。
RHTの開閉に要する時間はわずか14秒で45km/h以内の速度であれば走行中でも開閉できます。
エクステリア
フェラーリ・スタイリングセンターがF8 Spiderに設定した目標は、F8 Tributoのコンテンツを進化させ、かつ、Ferrariの歴史において最も伝統的なミッドリア・エンジンV8スポーツカーからヒントを得て、様式の記念となるフェラーリV8エンジンを設計することでした。その結果、車輌の高いな空力特性によって明確に示唆された、よりスポーティーなデザインかつ、独自の個性を備えたモデルが完成しました。
フロント・ビューは、このエリアに施された広範な空力的変更を強調するために、フロントエンド全体を再設計したS-Ductによって特徴付けられています。最も顕著な例は、新しく、よりコンパクトになった水平配置のLEDヘッドライトです。
リアスポイラーは完全に再設計されました。より大きくなり、テールライトの周囲を包み込むことで、視覚的に車輌の重心を下げ、伝統的なツインライト・クラスターとボディカラーのテールと一体化します。その他のスタイリングに関して、伝説的なシリーズの最初のモデル、308 GTBのような初期の8気筒ベルリネッタからもヒントを得ています。
エンジンカバーの仕上げは、F8 Spiderの最も際立つ特徴のひとつです。マンタのようなカバーの外観は、リアスクリーンから始まりセンター・スパインによって生成される気流に従うように、ブロウンスポイラーが備わるウイングの下で収束します。
中央のボリュームから現れる2枚のウイングは、ボディワークと調和して融合し、あらゆる角度から視覚的に連続性をもたらします。このウイングは吊り下げ式で、ウイング下にエアベントを形成してエンジンからの熱の放散を促進します。エンジンカバーの側面に設けた3つの彫刻的なストレーキは、クーペ・バージョンのリアスクリーンを象徴するスタイリングを踏襲するとともに、独自の機能も備えています。このストレーキは、ブラックで仕上げられており、重量を低減し、デザインに視覚的な透明感を加味します。
ボリュームあるトノーカバー・フィンから現れるクレストは、F1「スワンネック」(リアウイング・ステー)由来のもので、気流をしなやかに後方のスポイラーに流します。
コックピット
F8 Spiderのコックピットは、フェラーリのミッド・リアエンジン・ベルリネッタにみられる典型的なドライバー志向のクラシックな外観を保持しています。F1マシン同様にドライバーと車の一体化を図るコンセプトを導入し、すべてのコントロールが新世代ステアリングホイールに搭載されています。また、スポーティー・シートも最新型です。
ダッシュには、センターサテライトを支え、ダッシュボード内部を横に広がるアルミニウム製セールパネルが組み込まれています。また、視覚的な明るさを創出するために、カーボンファイバー製の細長いインサートが上部と下部を分割し、流れるような外観を生み出しています。 このセクションには、オプションでパッセンジャー側に7インチ・タッチスクリーン・ディスプレイも組み込むことが可能です。ドライバー側のダッシュには中央にレブカウンターを配したクラシックなインストルメントクラスターが装備されます。
センタートンネルは、ダッシュ本体と明確に分離してその下に設置されており、F8 Spiderのインテリアが醸し出す軽快感を高めます。浮いているように見える彫刻作品のような新型ブリッジは、キャビンのさらなる合理化にも寄与するインテリアの特徴的な要素のひとつです。
エアロダイナミクス
F8 Spiderは、フェラーリのGTBおよびチャレンジなどのレースで培った最先端の空力ソリューションと革新的技術を取り入れ、ステアリングを握る誰もが最高レベルのパフォーマンスを引き出すことができるミッド・リアエンジン・ドロップトップに仕立て上げられています。
F8 Spiderのフロント・ラジエターの位置(488 Spiderとは異なり、後傾させて搭載)は冷却の面で有益ですが、ダウンフォースを生成するアンダーボディの表面積を縮小させてしまいます。
そのため、ラジエターを抜ける気流とフロントホイールで発生する乱流との積極的な相互作用によって、ドラッグ低減を図ると同時に最大のダウンフォースが獲得できるよう、熱気を放散するラジエターアウトレット部の形状を再設計しました。その結果、488 Spiderと比較して、車輌全体の効率が10%向上しています。
ビークルダイナミクス
全体的な性能水準は、出力の増加、軽量化に加えて、エアロダイナミクス係数を改善したことで、488 Spiderよりも格段に高くなりました。限界を超えたドライビングをより簡単にし、自信に満ちた体験をもたらすビークルダイナミクスシステムの貢献によって、その性能をより多くのドライバーが楽しめるようになりました。小径リムのステアリングホイール、現在 バージョン6.1 となった統合SSCコンセプトの新FDE+(フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー・プラス)の導入もこれに含まれます。
F8 Spiderの卓越したパフォーマンスを引き出しやすく、制御可能にするという目標を達成するために、フェラーリのエンジニアは、エンジンとエアロダイナミクスの性能を最新のビークルダイナミクス・コントロールシステムに統合させることに取り組みました。サイドスリップ・コントロールシステムは、ステアリング操作の制限をさらに改善し、一層進化しています。バージョン6.0から6.1への移行は、フェラーリダイナミックエンハンサーシステム(FDE+)がマネッティーノの「RACE」ポジションでも利用可能となったことを示しています。
FDEは、フェラーリのソフトウェアを使用してキャリパーのブレーキ圧を調整する横方向のダイナミクス制御システムです。488 Pistaでデビューし、その後488 Pista Spiderで採用されました。続いてF8 Tributoが、拡張機能を備えた新しいFDE+バージョンを搭載し、現在F8 Spiderにも導入されています。この制御システムは、コーナリングのコーナー脱出時(ブレーキングしていない場合)に作動しますが、低グリップ状況下およびマネッティーノの「RACE」モードでも利用できるよう拡張されました。
7年間メンテナンス
卓越した品質基準と、さらなるカスタマー・サービスの充実を目指すフェラーリでは、F8 Spiderに7年間の純正メンテナンス・プログラムをご用意しております。
フェラーリの全ラインナップを対象としたこのプログラムは、最初の車輌登録から7年間にわたり、お客様のフェラーリのパフォーマンスと安全性が最高の状態で維持されるべく、すべての定期メンテナンスを保証するフェラーリならではのサービスです。
この特別なサービスは、保証期間内であればオーナー・チェンジされても継続されるため、認定中古車を購入されたお客様も、長期間安心してフェラーリ・ライフをお過ごしいただけます。定期メンテナンス(20,000kmごと、もしくは毎年1回。走行距離制限なし)では、マラネッロのフェラーリ・トレーニング・センターで研修を受けた有資格者による「純正スペアパーツ」および最新の診断テスターを使った詳細な検査を受けていただけます。これは純正メンテナンス・プログラムの魅力のひとつです。
このサービスは、全世界の市場で展開する正規ディーラー・ネットワークにてご利用いただけます。マラネッロで製造された車輌は、いつの時代もテクノロジーとスポーツ性を象徴する存在であり続けています。その優れた性能と素晴らしさを維持することを願うお客様に向けて、フェラーリはこれまで展開してきた幅広いレンジのアフターセールス・サービスに加えて、この純正メンテナンス・プログラムを導入し、さらなるサービスの向上に努めています。
諸元概要
エンジン
タイプ | V8 - 90°-turbo-dry sump |
総排気量 | 3,902 cc |
最高出力* | 530 kW(720 cv)@ 8,000 rpm |
最大トルク* | 770Nm @ 3,250rpm |
比出力 | 185cv/l |
許容最高回転数 | 8,000rpm |
圧縮比 | 9.6:1 |
サイズ & 重量
全長 | 4,611 mm |
全幅 | 1,979 mm |
全高 | 1,206 mm |
乾燥重量** | 1,400 kg |
パフォーマンス
0-100 km/h 加速 | 2.9 秒 |
0-200 km/h 加速 | 8.2 秒 |
最高速度 | 340 km/h 以上 |
燃料消費/CO2 排出量
認証取得中
* With 98 オクタン燃料使用時
**軽量オプション・コンテンツ装備車