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28 Apr 2022

「Icona」シリーズの新モデルとして、Daytona SP3 が誕生

伝説的勝利を飾ったマラネッロのスポーツプロトタイプからインスパイア

「Icona」シリーズの新モデルとして、Daytona SP3 が誕生

2021年11月20日、スカルペリーア・エ・サン・ピエロ発1967年2月6日、フェラーリはその長い歴史の中でも屈指の離れ業を成し遂げました。その年の国際スポーツカー選手権の初戦だったデイトナ24時間レースで、トップ3を独占したのです。1位の330 P3/4、2位の330 P4、3位の412Pが横一列に並び、フォードのホームサーキットでチェッカーフラッグを受けたシーンは伝説となっています。この3台は、330 P3の開発が頂点に達したレーシングカーで、チーフエンジニアのマウロ・フォルギエリによって、基本要素であるエンジン、シャシー、エアロダイナミクスが大幅に改良されていました。330 P3/4は、1960年代のスポーツプロトタイプの精神を完璧に象徴していました。1960年代は、今ではクローズド・ホイール・レースの黄金期として知られ、何世代ものエンジニアやデザイナーが時代を超えてお手本としてきました。

新IconaのDaytona SP3という車名は、あの伝説の1-2-3フィニッシュを彷彿とさせ、モータースポーツにおける比類ない地位をフェラーリが獲得する上で貢献したスポーツプロトタイプにオマージュを捧げています。Daytona SP3は、本日、2021年フェラーリ・フィナーリ・モンディアーリを開催中のムジェロ・サーキットで披露されました。2018年にFerrari Monza SP1、SP2で始まったIconaシリーズに加わる限定モデルです。

Daytona SP3のデザインを支えるのは、対照的な要素が生み出す美しい相互作用です。見事に彫り込まれた肉感的なフォルムとシャープなラインが交錯する様は、エアロダイナミクスの重要性が急速に高まっていた頃の330 P4や350 Can-Am、512 Sといったレーシングカーのデザインに通じます。着脱可能なハードトップを備える「タルガ」ボディという大胆な選択も、スポーツプロトタイプの世界に倣っています。これによってDaytona SP3は、胸躍るドライビング・プレジャーに加えて、使いやすいパフォーマンスも兼ね備えるモデルとなりました。

Daytona SP3は技術面でも、既に1960年代にレースで取り入れられていた洗練されたエンジニアリング手法をインスピレーションとしています。当時と同じように、前述の3つの基本要素に関して努力を重ねることで、最大のパフォーマンスを達成したのです。

Daytona SP3は、自然吸気V12エンジンをミッドリアに搭載する、レーシングカーの典型的レイアウトを採用しています。異論の余地なくマラネッロを最もよく象徴するエンジン形式であり、しかもこのパワーユニットは、フェラーリ史上最高の840cvもの出力を発生し、最大トルクは697Nm、最高回転数は9500rpmに達します。 シャシーはF1の技術を活用した完全なコンポジット製で、この技術がロードカーで使われたのは、マラネッロのスーパーカー、LaFerrari以来です。シートはシャシーと一体化しており、重量削減とともに、レーシングカーに似たドライビングポジションを実現しています。

最後に、エアロダイナミクスの研究と設計では、インスピレーションの元となったマシンと同様に、純粋にパッシブ式の空力ソリューションのみを活用して効率を最大化することに力が注がれました。アンダーボディから低圧の空気を抜き出すチムニーなど、前例のないソリューションによって、Daytona SP3は、可動式の空力デバイスを使用せずに、フェラーリ史上最も空力効率に優れたモデルとなりました。こうした革新的技術を巧妙に取り入れたことで、0-100km/h加速2.85秒、0-200km/h加速わずか7.4秒を達成しています。胸躍るパフォーマンス、究極のセットアップ、そして聞く者を陶酔させるV12サウンドが、まったく類のないドライビング・プレジャーをもたらします。


スタイリング

1960年代のレーシングカーのスタイリングをインスピレーションとしているとはいえ、DaytonaSP3は紛れもなく独創的でモダンなフォルムに身を包んでいます。その彫刻的なインパクトは、スポーツプロトタイプの官能的なフォルムを称え、完全に現代的な形でよみがえらせています。これほど野心的なデザインには、チーフ・デザイン・オフィサーのフラヴィオ・マンゾーニとスタイリングセンターのチームによる綿密な計画と実行が必要だったことは言うまでもありません。


エクステリア

ラップアラウンド式のウィンドスクリーンを先端とするDaytona SP3のキャビンは、官能的な彫刻に埋め込まれたドームのように見え、その両側にしなやかなフェンダーが大胆に立ち上がっています。車体全体のバランス感を強調する、ひとつの塊から削り出されたようなフォルムには、長きにわたって高く評価されてきたイタリアのコーチビルドの技が最高の形で色濃く表れています。流麗なふくらみと鋭角的な面が苦もなく溶け合い、マラネッロで長く受け継がれてきたさりげない美的バランスを感じさせます。

頂点が二つあるフロントフェンダーは、512 Sや712 Can-Am、312 Pといった過去のフェラーリ・スポーツプロトタイプの彫刻的エレガンスを参考にしています。ホイールアーチの形状は、サイドボディのフォルムを効果的に暗示しています。フロントでは構造を担い、タイヤ側面の丸い形に完全には添っていないため、タイヤとタイヤハウスを強く結びつけています。サイドボディ後部は、ほっそりとしたウエストから外へ張り出し、リアタイヤ前方を包み込む屈強なふくらみへと盛り上がってから、テールに向かって再び絞り込まれており、これが斜めから見た姿に力強いダイナミックな印象を与えています。

もうひとつ鍵となる要素がバタフライドアです。ここにはエアボックスが内蔵されており、サイドに搭載するラジエーターへと空気を導きます。結果的に生まれた彫刻的フォルムによって、ドアに明確なショルダーができ、そこに配置されたエア・インテークが、ウィンドスクリーンの垂直なカットと視覚的につながっています。ドアの前端はフロント・ホイールアーチの後部を形成しており、ドアの特徴的な表面は、フロントタイヤから出る気流の制御にも役立っています。この表面の処理も、Daytona SP3のデザインに部分的なインスピレーションを与えた512 Sといったレーシングカーを強く想起させます。

フェンダーミラーの位置は、ドアの前方からフェンダーの頂点へ移動しました。これも1960年代のスポーツプロトタイプを思わせます。この位置が選ばれたのは、視認性を高め、ドア・インテークへの気流に及ぼす影響を減らすためです。ミラーのカバーと支柱は、これに特化したCFD(数値流体力学)シミュレーションを行って、インテークへの流れを阻害しない完璧な形に整えられました。

斜め後方から見た姿はさらに重要で、Daytona SP3 の独創的なスタイリングが完全に露わになります。ドアのボリュームは彫り込まれて、特徴的なフォルムを形成しており、リアフェンダーの屈強なふくらみと組み合わさって、くびれたウエストのようなまったく新しいルックスを生み出しています。ドアはフロント・ホイールアーチの面を延長させ、堂々たるリアとの釣り合いを取って、サイドボディのボリュームを視覚的に逆転させ、よりキャブフォワードな印象を与えています。サイド・ラジエーターの搭載位置が変わったことで、このアーキテクチャーをスポーツカーに適した形で採用できました。

Daytona SP3のフロントで最も印象的なのが左右の力強いフェンダーです。外側と内側に頂点があり、後者はボンネット上の2個の排気口へと落ち込み、フェンダーの幅を広く見せています。外側の頂点は視覚的ボリューム感を生み、内側の頂点は空力的な役割を果たす。この関係は、このモデルのスタイリングとテクノロジーの密接な結びつきを強調しています。フロント・バンパーには広いセンターグリルが設けられ、これを挟む2本のピラーと上下に並ぶ水平ブレードを、バンパーの外縁が取り囲んでいます。ヘッドライト・アッセンブリーは上部の可動パネルが特徴で、初期スーパーカーのポップアップ式ヘッドライトを思い出させます。これはフェラーリの大切な伝統的要素であり、車体にアグレッシブでミニマリストな印象を与えています。2個の小型バンパーは、330 P4をはじめとするスポーツプロトタイプのエアロフリックを参考にしたもので、ヘッドライトの外縁部から出て、フロントをいっそう表情豊かにしています。

リアのボディワークのハイライトは、フェンダーの力強い外観です。2個の頂点のテーマが繰り返され、空力的な排気口が3次元的フォルムをいっそう印象づけています。コンパクトなコクピットは後部が絞り込まれ、フェンダーと共に力強いテールを形成しており、その中央には330 P4をインスピレーションとするバックボーン・エレメントがあります。バックボーンの末端には、この新Iconaモデルの脈打つ心臓部である自然吸気V12エンジンが、その輝かしい姿をすべて露わにしています。

リアを締めくくるのが複数の水平ブレードです。軽快かつラディカルで、一体構造のような空間を生み出し、未来的であると同時にフェラーリDNAの特徴を感じさせる外観です。テールライト・アッセンブリーは、スポイラー下の輝く1本の水平なバーを形成し、ブレードの1列目に組み込まれています。ディフューザー上部の中央にはツイン・テールパイプが配置され、アグレッシブなキャラクターを強めつつ、横幅が広く見えるデザインを引き締めています。


インテリア

Daytona SP3ではコックピットも、330 P3/4や312 P、350 Can-Amといった歴史的フェラーリをインスピレーションにしています。デザイナーは高性能シャシーを出発点に、細心の注意を払って洗練された空間を作り出しました。現代的なグランド・ツアラーの快適性と洗練性を実現しつつ、ミニマリストなデザインを貫いています。そうした哲学は、スタイリングの基本ルールの背後にも見られます。例えばダッシュボードはミニマリストで機能的でありながら、極めて現代的な印象でもあります。スポーツプロトタイプでは、シートのクッションが直接シャシーに接着されていましたが、それを現代的なシートに変貌させてボディと一体化し、周囲のトリムとのシームレスな質感の連続性を作り出しました。

ウィンドスクリーンをはじめとするエクステリアの要素も、インテリアのアーキテクチャーによい影響を与えました。横から見ると、ウィンドスクリーンのヘッダーレールにあるカットが、コックピットを2分割する垂直面を作っており、メーター類を収めたダッシュボードの機能的エリアとシートエリアとを切り離しています。このアーキテクチャーは、極めてスポーティーでありながら非常にエレガントでもあるという難題を巧妙に解決しています。

Daytona SP3のインテリアでは、レーシングカーに典型的なスタイリング要素を生かして、ドライバーとパッセンジャーがくつろげるドライビング環境の構築を目指しました。主眼となったのが、ダッシュエリアと2個のシートを明確に分離して、キャビンの横幅を広く見せることです。シートは、シームレスに連続する質感の一部となっており、そのトリムはドアにまで拡大されて、スポーツプロトタイプのエレガントな機能性を再現しています。こうしたトリムの延長は、ドアを開けたときに見えるシルにも及んでいます。

ダッシュボードも同じ哲学に従っています。Daytona SP3のストラクチャーによって、トリムはクォーターガラスまで広がり、ウィンドスクリーンと接続するエリア全体を包み込んでいます。ほっそりと引き締まったダッシュボードは、内張りの中に浮いているように見えます。そのスタイリングテーマは2層に分かれており、トリムで覆われた上部のシェルは、すっきりとした彫刻的外観で、素材と機能を分割する明確なラインで下部と分かれています。ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)のタッチコントロールは、すべてこのラインより下に集められています。

シートはシャシーと一体化しているため、高性能マシンと同じ人間工学的なラップアラウンド型デザインです。同時に、徹底的な細部へのこだわりでも他と一線を画しています。左右のシートの素材によるつながりや、周囲のトリムへのテーマの拡張、ボリューム感による効果などは、固定式シートだからこそ可能となりました。ドライビングポジションの調整は、ペダルボックスを動かして行います。また、コックピットのテクニカルエリアと乗員エリアを明確に切り離したことで、シートのボリュームをフロアまで拡大できました。ヘッドレストもレーシングカーを参照していますが、レーシングカーではシートと一体化しているのに対し、Daytona SP3では独立しています。シートを固定し、ペダルボックスで調整するアーキテクチャーの採用により、シートがリアのトリムと完全につながり、コックピットが視覚的に軽快な印象となりました。

ドアパネルのデザインも、コックピットの幅を広く見せることに貢献しています。カーボン・ファイバー製パネルにトリムエリアをいくつか加え、肩の高さにはレザーパッドを設けて、スポーツプロトタイプとの関連を感じさせると共に、ラップアラウンドの印象を強めています。対して、低い部分はシートの延長のように感じられます。センタートンネルには、左右のシートを結びつけるトリムの下にトレードマークのブレードを配し、両端に機能的要素を配置しています。前方にあるシフトゲートは、SF90Stradaleからラインアップモデルに再び導入されていますが、Daytona SP3では高い位置にあるため、周囲より上に浮いているような印象です。ストラクチャーの末端はカーボン・ファイバー製のセンターピラーで、これがダッシュボード全体を支えているように見えます。


パワートレイン

市場で最も刺激的なV12をDaytona SP3に搭載するため、フェラーリは812 Competizioneのエンジンを出発点に選びました。しかし、搭載位置はミッドリアに移して、吸排気レイアウトと流体力学上の効率性を最適化しています。こうしてF140HCエンジンは、フェラーリがこれまでに作り上げた中で最もパワフルな内燃機関となり、驚異の最高出力840cvを発生すると共に、跳ね馬のV12ならではの胸躍るパワーとサウンドを誇ります。

812 Competizioneに搭載する先行エンジンF140HBと同じく、シリンダー・バンク角は65°、排気量は6.5リッターで、アップグレードも引き継いでいます。あらゆる開発によってパワートレインのパフォーマンスは強化され、このカテゴリーの新たなベンチマークとなりました。驚異的なサウンドは、的を絞った吸排気ラインの開発から生まれました。また、7速ギアボックスも、専用の戦略を開発したことで、いっそう素早くなり、操作感も向上しています。

9,500rpmという最高回転数と、そこまで素早く高まり続けるトルクカーブによって、乗員は無尽蔵のパワーと加速を味わえます。特に、エンジンの重量と慣性の削減に惜しみない注意が注がれ、スチールより40%軽量なチタン製コンロッドを採用し、ピストンにも異なる素材を活用しています。また、新ピストン・ピンにはダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施し、摩擦係数を下げて、パフォーマンスや燃費を向上させました。クランクシャフトはバランス取りを行ったほか、3%軽量化されました。

バルブを開閉するのは、F1から派生したスライディング・フィンガーフォロワーで、質量を削減し、よりハイパフォーマンスなバルブ・プロフィールを利用するために開発されました。スライディング・フィンガーフォロワーにもDLCコーティングが施されています。その役割は、カムシャフト(これもDLCコーティング)の動きを、油圧式タペットをピボットにして動くバルブに伝達することです。

吸気システムは根本的に再設計されました。経路全長を短縮するため、マニホールドとプレナムチャンバーがいっそうコンパクトになり、高回転域でさらに強大なパワーを発揮します。一方、トルクカーブをすべての回転域で最適化しているのが、可変ジオメトリー吸気ダクトです。このシステムは、吸気ダクトアッセンブリーの長さを絶え間なく変更し、エンジンの点火間隔に適合させることで、シリンダーへの動的な充填を最大化します。アクチュエーターを制御するのは、ECUによってクローズドループ制御される専用の油圧システムで、これがエンジンの負荷に応じて吸気ダクトの長さを調整します。最適化されたカムプロフィールに加えて、可変バルブタイミング・システムによって、前例のない等高ピーク圧のシステムが生まれました。これは、低・中回転域のトルクを犠牲にせずに高回転域でパワーを得るために必要です。こうして、連続的かつ急速な加速感と、それが最高回転数で驚異的なパワーに達する感覚が実現しました。

ガソリン直噴システム(噴射圧350bar)では、マネージメント戦略がさらに進化しました。燃料ポンプ2個とレール4本の構成に変わり、レールの圧力センサーからのフィードバックを、クローズドループの圧力制御システムと電子制御インジェクターで使用します。燃料噴射のタイミングと各インジェクションの噴射量をキャリブレーションし、噴射圧を引き上げることで、汚染物質の排出と粒子状物質の生成を、812 Superfastとの比較で30%削減できました(WLTCサイクルによる)。

イグニッション・システムを常時モニターするECU(ION 3.1)は、イオン電流を測定して点火タイミングを制御するイオン感応システムを備えます。また、シングルスパークとマルチスパークの機能を兼ね備え、混合気のマルチイグニッションが必要な際にも、スムーズでクリーンなパワーデリバリーを実現しています。ECUは燃焼室内の燃焼も制御して、エンジンが常にピークの熱効率で稼働するようにしています。これには、タンクに搭載する燃料のオクタン価を判別できる洗練されたストラテジーが貢献しています。

まったく新しい可変容量オイルポンプが開発され、エンジンの全作動範囲にわたって油圧を継続的に調整することが可能となりました。エンジンECUがクローズドループで制御するソレノイドバルブを使って、流量と圧力についてポンプ容量をコントロールし、稼働中のあらゆる瞬間に、エンジンの機能と信頼性の保証に必要な量のオイルだけを供給します。また、摩擦を低減し、機械的パフォーマンスを向上させるため、従来のV12のものより低粘度のエンジンオイルを使用し、排油ライン全体を流動性が高まるように設計して効率性を向上させた点も重要です。


アーキテクチャー

Daytona SP3では、ドライバーが車両との完全な一体感を味わえるよう、マラネッロがF1で開発してきた人間工学の専門知識をエンジニアリングに大いに活用しました。シートがシャシーと一体化しているため、ドライビングポジションは他のフェラーリのラインアップモデルより低く、後ろに倒れており、実はシングルシーターと非常によく似たポジションです。これによって、重量削減のほか、全高を1142mmに抑えることができ、したがってドラッグが低減されました。ペダルボックスは調整可能なので、ドライバーは最も快適なポジションを見つけられます。

Daytona SP3のステアリング・ホイールは、既にSF90 Stradale、Ferrari Roma、SF90Spider、296 GTBに導入されているものと同じヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)を採用し、フェラーリの「手はステアリング・ホイールに、目は路上に」の哲学を継承しています。タッチコントロール式のため、ドライバーは手を動かさずにDaytona SP3の機能の80%を操作でき、16インチの曲面HDスクリーンに、ドライビングに関するすべての情報が即座に表示されます。

Daytona SP3のシャシーとボディシェルは、いずれもすべてコンポジット製です。これはF1から直接取り入れられた技術であり、極めて軽量で、構造的な重量剛性比に優れています。車重を最低限にまで徹底的に削減し、重心を下げ、コンパクトなアーキテクチャーを実現するため、シート・ストラクチャーなど複数のコンポーネントをシャシーと一体化しました。

使用されたのは航空用途のコンポジットで、なかでもT800カーボン・ファイバー製のタブは、各部分の炭素繊維量を正確にするため、ハンド・レイアップで作られます。ドアとシルに使われたT1000カーボン・ファイバーは、側面衝突に対して理想的な特性を持ち、コクピットの保護性能で不可欠な役割を果たしています。最も衝撃を受けやすい部分には、高い強度を誇るケブラー?も使われています。オートクレーブ成形はF1の技術を踏襲し、130℃と150℃の2段階で行い、コンポーネントを真空バッグに入れて、積層のいかなる不具合も排除しています。

Daytona SP3のために、専用のタイヤがピレリと共同で開発されました。新P Zero Corsaは、特にグリップが低い状況での車両の安定性を重点に、ドライとウェット両方のパフォーマンスが最適化されています。新Iconaモデルには、フェラーリSSCも最新バージョンの6.1が採用されているほか、コーナリング・パフォーマンスを引き上げるため、ミッドリアV12モデルで初めてFDE(フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー)を搭載しています。FDEは横方向のダイナミック・コントロールシステムで、限界域での走行時に、ブレーキキャリパーの制動力に作用して、車両のヨーアングルを制御します。FDEは、マネッティーノで「Race」か「CT-Off」モードを選択したときだけ作動します。

ミッドリアシップのアーキテクチャーとコンポジット製シャシーを採用したことで、重量物が重心の周囲に集中し、前後アクスルの重量配分も最適化されました。こうした選択とエンジンの開発によって、パワーウェイト・レシオや、0-100km/hおよび0-200km/hの加速時間で、記録を塗りかえる数値が実現しています。


エアロダイナミクス

Daytona SP3の目標は、フェラーリ史上最高レベルのパッシブな空力効率を誇るモデルとなるような空力ソリューションを導入することでした。そのためには、細部にまで徹底的な注意を払って、熱を効率的に放散する冷却装置を設計する必要がありました。全体の空力コンセプトと可能な限り融合したレイアウトとするためには、高温エアフローのマネージメントが不可欠でした。

F140HCエンジンの出力向上にともなって、放散すべき熱出力も増加し、冷却のための放射質量も増大しました。必要な空力ソリューションをフロントエンドに導入するためには、何よりもまず冷却効率の集中的な開発が必要でした。こうして、冷却ファン・ハウジングや、高温の空気を逃がすアンダーボディの開口部、吸気ダクトなどが綿密に設計され、フロント・ラジエーターのサイズ拡大を避けられるよう、すべてが最適化されました。

サイドボディのデザインにも多くの研究が費やされました。これに恩恵をもたらしたのが、ギアボックスとエンジンオイルの冷却装置を中央寄りに配置したことです。このソリューションによって、ドアへの流路を設ける道が開け、ラジエーターのインテークダクトをシャシー前方へ移動できました。その結果、フロントフェンダーがインテークダクトの理想的な場所となりました。新鮮な空気を取り込めるので、ラジエーターの冷却にとっても非常に効率的です。

空力的機能とデザインの高度な融合は、エンジン・カバーにも表れています。その中央にはバックボーン構造があり、新鮮な空気をエンジンのインテークへ送り込むだけでなく、エンジンベイから高温の空気を排出する出口にもなっています。エンジンのエア・インテークはバックボーン・デザインの基部に配置され、エアフィルターまでの距離を短縮して、ロスを最小化しています。バックボーン・セクションとリアの一体型ボディワークとを区切る縦長のスロットは、エンジンの熱を放散し、新鮮な空気を取り入れます。これが可能なのは、リアバンパーのブレードの間に位置する排気口と相互作用が起きるからです。

熱マネージメントで採用したレイアウトによって、エアロダイナミクス・チームが活用できる空間が生まれ、全体の効率を最大化できました。これは、立体と面の完璧な融合に力を注いで成し遂げられました。また、可動エアロ・ソリューションを用いずに、アッパーボディとの相乗効果で機能する新コンセプトをアンダーボディに導入したことも貢献しました。

Daytona SP3のフロントは、フォルムと機能がとけ合って、見事な調和を見せています。中央のラジエーター・グリル両側にあるインテークは、ブレーキダクトに通じているほか、ここから導かれた空気がボンネット両側の出口から排出されて、フロントのダウンフォース発生に貢献するブロウン・ダクトを形成しています。ヘッドライト下の2個のエアロフリックもダウンフォースを増強します。バンパー隅の内側に上下に並ぶウィングレットは、気流をホイールアーチ内へ導いて、内向きの流れを作り出 し、これがサイドボディを流れる気流を整えて、タイヤの後流が作り出す乱気流を抑制し、ドラッグを低減します。

サイドボディの気流をマネージメントしてドラッグを低減するエレメントは、フロント・バンパーのブロウン形状だけではありません。ホイールのスポークの形状と、サイドボディ自体の垂直なデザインも貢献しています。前者は、タイヤハウス内の空気の排出を促進し、サイドボディを流れる気流に添うように後流を整えます。後者の広い面は整流板として働き、フロントタイヤで発生する後流を車体表面に近づけ、後流の横幅を狭めることでドラッグを低減します。また、整流板のデザインは、文字どおり空気の通り道を隠しており、フロントのタイヤハウス内の空気を導いてリアタイヤの前に排出します。このソリューションはフロアの働きをいっそう強めるので、ダウンフォースとドラッグの両面にメリットがあります。

アンダーボディは、フロア全体の働きを向上させるように開発され、局所的なボルテックス生成に特化した一連のパーツが導入されました。重要なのは、アンダーボディを下げると吸着力のピークが路面に近づき、グラウンド・エフェクトを活用するパーツの効率性が高まることです。フロントタイヤの前に装着する2組のカーブしたパーツは、気流に対する角度を利用して、力強い安定したボルテックスを生成します。このボルテックスは、アンダーボディとフロントタイヤに作用して、ダウンフォースを発生し、ドラッグを低減します。

他のボルテックス・ジェネレーターは、フロント・アンダーボディを実質的に密封するように最適化され、配置されました。ホイールアーチ内の開口部に接するシャシーの縁には、アウター・ボルテックス・ジェネレーターが導入され、F1の整流板と同じ効果を発揮します。これが作り出すボルテックスが、アンダーボディをフロントタイヤの後流の影響から守る壁となり、フロア中央部で発生する効率性の高い気流への干渉を抑えるのです。

ダウンフォースを得る上で最も重要な開発エリアとなったのが、リア・スポイラーです。エンジニアは、フロントとリアのダウンフォースのバランスを取るため、エンジン・インテークの移動とテールライトの新デザインによって生まれたチャンスをフルに生かしました。この2つのソリューションによって、車幅いっぱいまでスポイラーを拡大できたのです。横幅が広がっただけでなく、リップも後方に延長されて、ドラッグを増やさずにダウンフォースを増強することにつながりました。

このモデルの決定的な特徴ともいえる最も革新的なソリューションが、リアのアンダーボディにあるフロア・チムニーで、リアフェンダーに組み込まれた2個のルーバーまで垂直のダクトでつないでいます。フェンダーの湾曲で生まれる自然な吸引力が、ダクトを通過する気流を最大化し、アンダーボディとアッパーボディの気流を流体力学的に結びつけます。このソリューションには、直接的なメリットが3つあります。まず、フロント・アンダーボディ下の気流を増加させてアンダーボディの閉塞を低減するので、ダウンフォースが増加するほか、エアロバランスがフロント寄りになるので、ターンインが向上します。2つ目に、フロアのインテーク形状によって生じた気流を局所的に加速させ、非常に強力な吸引力を生み出して、リアのダウンフォースを向上します。最後に、リアフェンダー上のルーバーからの気流が増えるので、リア・スポイラーにも恩恵をもたらします。

開発の最後のエリアは、ディフューザーを垂直・水平の両面で拡大することでした。これは、エグゾーストパイプの位置を中央の高い位置にしたことで可能となりました。こうしてあいた中央の空間は、ダブル・ディフューザーに似たソリューションに活用されました。このディフューザーでは、気流は2層に分かれて広がることができます。これがリアに印象的な表情を与え、テールの中に浮かんでいるように見えるブリッジ形状を生み出しています。このコンセプトでは、気流中央部の強いエネルギーを利用して、中央の「ブリッジ」構造の内部と外部に空気を効率的に送り込みます。すると、中央の流路の外を通過する気流が、内部の気流の勢いを強め、ディフューザー全体の効率を高めるのです。

Daytona SP3のウィンドスクリーンはラップアラウンド型で、着脱可能なハードトップの先端までガラスが延びています。上部シールに組み込まれたノルダーは、ハードトップを外して走行中に、気流の向きをヘッダーレールの上へと正確に調整します。ロールフープの中央部は、リア・ボディワークのバットレスやエンジン・カバーの形状に合わせてへこんでいます。これは、リアのヘッダーレールへと方向を変えられた後流が、再び左右のシートの間に入り込む可能性を最小限にするためです。サイドウィンドウ後方の気流は、ヘッドレスト後方のリアトリムに導かれて、ウィンドストップで保護された中央のくぼみにあるスロットへと流れ、コクピットの外に排出されます。


FERRARI ICONA

Ferrari Iconaシリーズは、2018年にFerrari Monza SP1とSP2で始まりました。そのインスピレーションとなったのは1950年代の競技用バルケッタで、数々の誉れ高い勝利を遂げて、モータースポーツにおける伝説的地位をフェラーリが獲得することに貢献しました。Iconaシリーズは、フェラーリ屈指のアイコニックなモデルのタイムレスなスタイリングを大胆かつ現代的に再解釈し、現在利用できる最も革新的な素材やテクノロジーを駆使して、フェラーリの歴史を称えています。

歴史の特定の時点をインスピレーションにするというアイデアは、Iconaのコンセプトの中核を成していますが、単に過去のスタイリング要素を再利用するだけに留まりません。むしろ目標は、時代の真髄を抽出し、それを足掛かりに、未来のアイコンとなる独創的な新しいコンセプトを生み出すことです。Iconaのモデルはすべて、他のラインアップモデルには見られない独特のソリューションを誇り、フェラーリの最上位のお客様やコレクターの方々など、跳ね馬の誇り高いアンバサダーだけを対象にしています。


7年間メンテナンス・プログラム

卓越した品質基準と、さらなるカスタマー・サービスの充実を目指すフェラーリでは、Daytona SP3に7年間の純正メンテナンス・プログラムをご用意しております。フェラーリの全ラインアップを対象としたこのプログラムは、最初の車両登録から7年間にわたり、お客様のフェラーリのパフォーマンスと安全性が最高の状態で維持されるべく、すべての定期メンテナンスを保証するフェラーリならではのサービスです。この特別なサービスは、認定中古車を購入されたお客様にもご利用いただけます。

純正メンテナンス・プログラムの主なメリットが、定期メンテナンス(20,000kmごと、もしくは毎年1回。走行距離制限なし)で、純正スペアパーツおよび最新の診断テスターを使い、マラネッロのフェラーリ・トレーニング・センターで研修を受けた有資格者による詳細な検査を受けていただけます。このサービスは、全世界の市場で展開する正規ディーラー・ネットワークにてご利用いただけます。

マラネッロで製造された車両が誇る優れた性能と素晴らしさの維持を願うお客様に向けて、フェラーリはこれまで展開してきた幅広いアフターセールス・サービスに加えて、この純正メンテナンス・プログラムを導入し、さらなるサービスの向上に努めています。



Daytona SP3 主要諸元

パワートレイン

タイプ

V12 - 65°
総排気量 6,496 cc
ボア & ストローク 94 mm x 78 mm
最高出力* 618kW (840 cv) @9,250 rpm
最大トルク** 697Nm / 7,250 rpm
最高許容回転数 9,500rpm
圧縮比 13.6:1

サイズ & 重量

全長 4,686 mm
全幅 2,050 mm
全高 1,142 mm
ホイールベース 2,651 mm
フロント・トレッド 1,692 mm
リア・トレッド 1,631 mm
乾燥重量** 1,485 kg
乾燥パワーウェイトレシオ 1.77 kg
重量配分 44 % フロント / 56 % リア
燃料タンク容量 86 L

タイヤ&ホイール

フロント 265/30 ZR 20 J9.0
リア 345/30 ZR 21 J12.5

ブレーキ

フロント 398 mm x 223 x 36 mm
リア 380 mm x 253 x 34 mm

トランスミッション&ギアボックス

7速F1 DCT

電子制御

ESC、高性能ABS e/EBD、F1-Trac、e-Diff 3.0、SCM-Frs、SSC(サイド・スリップ・コントロール)6.1

パフォーマンス

0-100 km/h 加速 2.85 秒
0-200 km/h 加速 7.4 秒
最高速度 340 km/h

燃料消費/CO2 排出量

ホモロゲーション取得申請中


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