2022 年11 月27 日、マラネッロ/モンテカルロ発 バーチャル・モータースポーツのためにフェラーリが特別に手がける初のコンセプトカーとして、クローズド・ホイールのシングルシーター、Ferrari Vision Gran Turismo が誕生しました。
そのデザインは、マラネッロの比類ないレースの伝統に深く根ざしており、サイドボディを飾るカーナンバー75 が、高貴なヘリテージを示しています。今年は、フェラーリ最初のレーシングカー、125 Sが、あの名高いファクトリーのゲートを離れた1947 年から、75 周年の節目にあたり、Ferrari Vision Gran Turismo の発表は、それを正式に締めくくる特別な機会となりました。このモデルは、バーチャル環境におけるフェラーリの重要なステップであり、今後、情熱的な新世代のドライバーやエンスージアストに刺激を与えていくでしょう。それだけでなく、フェラーリのスタイリングを再定義する存在でもあります。フェラーリのロードカーとレーシングカーにおける未来的デザインのマニフェストであり、明日のエンジニアやドライバー(現実とバーチャルの双方)の創造力を刺激するのです。
Ferrari Vision Gran Turismo のデザインは、フラヴィオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・スタイリング・センターが担当しました。直接のインスピレーションとなったのは、ル・マン24 時間(跳ね馬は計9 勝)やデイトナ24 時間などの耐久レースで大成功を収めた、1960~70 年代の伝説的なフェラーリ・スポーツプロトタイプです。デザインに課せられた使命は、ドラマチックなプロポーションと未来的なラインによって、見事に達成されました。330 P3 や512 S といった傑作のDNA をさりげなく体現し、跳ね馬の輝かしいレース史にオマージュを捧げているだけでなく、クローズド・ホイールのレーシングカーの今後の進化が垣間見え、興味をかき立てます。
Ferrari Vision Gran Turismo のデザインは、スピードを体現するフォルムを中心に据えて構想されました。非常に幾何学的かつシャープで鋭角的なラインですが、それが極めて有機的なフォルムを支えています。このコントラストが複雑な印象を生み、外部と内部を覆う面の柔軟性と、ラインの幾何学的な正確性との組み合わせが、即座にそれと分かる個性となっています。アーキテクチャーを支えるのは先進的なエアロダイナミクスで、2 箇所の堂々たるサイドダクトがコンセプトのベースとなっています。フェラーリが特許を取得したこのソリューションによって、気流はフロント・アンダーボディからコクピット周辺へ、そして特徴的なサイドポッドへと導かれます。このソリューションは、アンダーボディ中央部で発生する推進力と吸着力の変動によって、極めて効率的に空力ダウンフォースを生み出します。リアのエアロダイナミクス開発では、特にディフューザーと2 段のリアウィングで、Ferrari 499P をインスピレーションとするコンセプトが活用されました。最後に、フロントのS ダクトと、ホイールアーチに組み込まれた排気口が、空力効率をさらに高め、高速走行時の安定性を引き上げます。
Ferrari Vision Gran Turismo が搭載するのは、バンク角120°の3 リッターV6 エンジンで、そのアーキテクチャーは、296 GTB、296 GTS、296 GT3、そして新499P と同じです。しかし今回は、テクニカル・レギュレーションによる制限がないため、真に究極のパフォーマンスを解き放つよう、さらに磨き上げられました。エンジンは、9000 rpm で1030 cv という強大な最高出力を発揮するようチューンアップ。これに加えて、リア・アクスルに1 基、左右フロントに各1 基、計3 基搭載する電気モーターが240 kW(326 cv)を発生します。フェラーリは、この革新的なパワートレインの胸躍るサウンドが忠実に再現されるよう、グランツーリスモと協力し、SIM レーサーがさらにリアルなレース体験を味わえるようにしました。
Ferrari Vision Gran Turismo のボディシェルは、フラットなカーボン・ファイバー製アンダーボディの上に浮いているように見えます。技術的コンポーネントはすべて下部に凝縮されているため、フォルムの純粋さが際立ちます。シャシーは、限界域で操縦する際に横方向のダイナミクスが強調される設計です。パワートレインのレイアウトによって、フロントとリアの最適な重量配分と、極めて低い重心が実現しているため、AWD の恩恵が生かされます。エラストキネマティック・サスペンションのセットアップは、グランツーリスモ™で使われるタイヤのパフォーマンス特性とマシンの空力バランスに合わせて開発されています。その目標は、恐ろしく複雑な市街地コースでも、耐久レースの伝統的なサーキットでも、最高のパフォーマンスを保証することでした。
サスペンションは、タイヤの接地面を維持して最大のトラクションを確保する設計のため、Ferrari Vision Gran Turismo は、ICE とMGU-K によるリアの最大トルク1100 Nm を残らず路面に伝えることができます。その結果、他の追随を許さないパォーマンスが実現しました。また、最先端の電子制御システムによって、長年フェラーリのロードカーとレーシングカーで定評のある、コーナリングでの比類ない敏捷性と絶妙なハンドリング・バランスも備えています。このように、フェラーリをドライビングする興奮を忠実に再現し、到達可能な限界域と強化されたパフォーマンスをゲーム中に正確
に体験できるよう設計されています。
また、このマシンが誇るハイブリッド・テクノロジーには、フェラーリならではの専門性として、F1 で開発を重ねた電気的なブーストと回生エネルギーに関する戦略が生かされています。これがバッテリーの充電状態を常に最適に管理するので、ドライバーはICE と電気モーターを組み合わせたパワーを最大限に活用でき、したがって、予選アタックはもちろん、決勝での継続的な周回中も、最大のパフォーマ
ンスが発揮できます。
インテリアのデザインは、エクステリアのデザインが拡張され、ピュアでミニマリストな手法で、ドライバーにとって最適な機能性と人間工学が実現しています。ダッシュボードのラインはクリーンで最低限です。ハイブリッドV6 を覆うシースルーのエンジン・カバーと同様に、透明なハイテク素材が、洗練されたモダンなステアリング・ホイールのメカニカル・コンポーネントを露わにしています。HMI は、簡単に素早く操作できる設計なので、ドライバーは常に目の前のコースだけに集中できます。
Ferrari Vision Gran Turismo は、モンテカルロで開催の「グランツーリスモ・ワールドファイナル」で披露され、2022 年12 月23 日から、GT7 のすべてのユーザーが体験できるようになりま
す。それに先だって、発表直後の11 月27 日中央ヨーロッパ時間19:00(日本時間翌3:00)から、GT7 のユーザーはゲームを通してクイズキャンペーンに参加でき、ウィナーは賞品としてFerrari Vision Gran Turismo を12 月15 日に受け取ることができます。同じ日に、実物大のデザインモデルがマラネッロのフェラーリ・ミュージアムで初めて一般公開され、現在開催中のエクスクルーシブ
なワンオフモデルの特別展と共に、2023 年3 月まで展示されます。
パワートレイン
タイプ | タイプ V6 – 120°、ツインターボ、全輪駆動 |
総排気量 | 3000 cc |
最高出力 ICE | 1030 cv / 9000 rpm |
最大トルク ICE | 900 Nm / 5500 rpm |
最高出力 | ハイブリッドシステム 240 kW(326 cv) |
サイズ&重量
乾燥重量 | 1250 kg |
重量配分 | 43.5% フロント / 56.5% リア |
トランスミッション&ギアボックス
8速F1 デュアルクラッチ・ギアボックス |
パフォーマンス
最高速度 | 350 km/h |
0-100 km/h | < 2.0 秒 |
0-200 km/h | < 5.0 秒 |
フィオラノラップタイム | < 1 ’10” |
グランツーリスモ™は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの子会社、株式会社ポリフォニー・デジタルが開発するレース・シミュレーションゲームで、1997 年に初めて発売されました。
ゲームの名称である「グランツーリスモ」(英語ではグランドツアラー)は、スポーティーなパフォーマンス・クーペを指します。ビジョン グランツーリスモは、ゲームの発売15 周年を記念して始まったプロジェクトで、そのきっかけは、グランツーリスモの発案者である山内一典氏の「みなさんが考える理想のグランツーリスモをデザインしていただけませんか?」という一言でした。フェラーリは、そのユニークなスポーツカーと類まれなドライビングの興奮を幅広いファンが楽しめるように、この課題に立ち向かい、初めてバーチャル・コンセプトモデルを生み出しました。