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2021年5月5日、マラネッロ発 812 Superfastをベースとする最新リミテッド・エディション・スペシャルシリーズの812 Competizioneが、本日、世界中のメディア、クライアント、ファンの皆様に公開されました。フェラーリのSNSアカウントでライブ配信された発表イベントでは、華麗なタルガトップバージョンの812 Competizione Aも登場。これも限定生産で、跳ね馬の輝かしいオープントップの伝統にオマージュを捧げるモデルです。

発表会が開催されたのは特別な場所でした。フィオラノのコース横に開設されたばかりのGTスポーティング・アクティビティー部門です。こうして、世界のサーキットでの70年にわたる成功で培われた比類ないレースのDNAと、マラネッロが生み出す公道仕様スポーツカーとの直接的な結びつきが、一段と強まりました。

発表イベントでは、まず812 Competizioneがサーキットを数周し、ダイナミックでハイパフォーマンスな走りをとおして、視聴者に車両のフォルムを存分に披露するとともに、フェラーリを象徴する自然吸気V12エンジンのあの紛れもないサウンドを響かせました。ホットラップが終わると、チーフ・マーケティング&コマーシャル・オフィサーのエンリコ・ガリエラによって新モデルが正式に披露され、続いて812 Competizione Aがベールを脱ぎました。

この2台は、フェラーリの至高の伝統を愛する極めて限られたコレクターやエンスージアストに捧げられるモデルです。妥協のない最高のパフォーマンスに重点を置き、革新的テクノロジーを、エンジン、ビークル・ダイナミクス、エアロダイナミクスに適用して、新たな高みへと基準を引き上げました。

812 Competizioneと812 Competizione Aのステアリングを握れば、公道でもサーキットでも、ドライバーは車両とひとつになれます。どれほど複雑な動きを求めても、操作に対する瞬時のレスポンスと完全なコントロールが保証されているからです。ステアリングを握る最高の楽しさとドライビングの興奮をどんなスピードでも味わえます。これに最も貢献するのが新しい独立式の四輪ステアリングで、並外れた敏捷性とコーナリングの正確性を実現しています。


パワートレイン

812 Competizioneと812 Competizione Aは、自動車の世界で最も刺激的なV12エンジンを搭載します。ベースは812 Superfastに搭載された複数の受賞歴を誇るエンジンで、そこから派生したこの自然吸気エンジンは、最高出力830 cvという目を見張るパワーに加えて、衝撃的なパワーデリバリーと、フェラーリV12の信奉者にはおなじみの他の追随を許さないサウンドを兼ね備えています。排気量は812 SuperfastのV12と同じ6.5リッターですが、様々なエリアに大幅に手を加えて出力を高め、レッドゾーンの新記録を樹立するとともに、吸気システムの流体力学と燃焼を最適化し、内部摩擦を低減しました。

最高回転数は9,500 rpmに達し、トルクデリバリーのクレッシェンドとともに、パワーと加速が尽きることなく滑らかに高まる感覚を生み出します。これは、コンロッドやピストン、クランクシャフト、バルブトレインなど、エンジンの主要コンポーネントを細部まで再設計した結果です。たとえばチタン製コンロッドはスチール製より40%軽量ですが、機械抵抗は同じです。一方、ピンストンピンにはダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施し、摩擦係数を低減して、パフォーマンスや燃費の向上、摩耗の低下につなげました。こうした改良に加えて、クランクシャフトはバランス取りを行い、以前のバージョンより3%軽量化されています。

最も大きな改良点は、バルブトレインとシリンダーヘッドで、いずれも完全な新設計です。カムシャフト(新たにDLCコーティングに)の回転でバルブステムを動かす装置は、DLCコーティングを施したスチール製スライディング・フィンガーフォロワーに変わりました。これはフェラーリのF1での経験から生まれた技術で、このエンジンのために特別に開発され、バルブリフト特性を高めています。

全回転域でエンジンが適切に空気を取り込めるよう、吸気システムも再設計されました。マニホールドとプレナムチャンバーをコンパクトにして経路の全長を短縮したため、高回転域でさらに大きなパワーを発揮します。一方、トルクカーブをすべての回転域で最適化しているのが、可変ジオメトリー吸気ダクトです。このシステムは、吸気ダクトアッセンブリーの長さを絶え間なく変更し、点火順序に適合させることで、シリンダーへの動的な充填を最大化します。その結果、エンジンは驚異的な速度でレブリミットまで回転を上げ、レッドゾーンまで谷が存在しません。

摩擦や機械損失を低減してエンジンの全体的効率を高めるため、エンジニアは、エンジンの全作動範囲で油圧を継続的に調整する可変容量オイルポンプを新たに開発しました。また、従来のV12で使用したものより低粘度のオイル(シェルHelix 5W40)の採用と、排油ライン全体にわたる流速の向上も、強調すべき重要なポイントです。

ますます厳しくなる排出規制に準拠しつづけるため、直接燃料噴射のマネージメント戦略もさらに開発が進められました。燃料噴射のタイミングと量のキャリブレーションに加え、噴射圧の引き上げによって、排出量と粒子状物質の生成を削減できました。これは特にエンジンの低温時に顕著です。

イグニッション・システムを常時モニターするECUは、イオン電流を測定して点火タイミングを制御するイオン感応システムを備えます。また、シングルスパークとマルチスパークの機能によって、スムーズで柔軟なトルクデリバリーを実現しています。ECUは燃焼室内の燃焼も制御して、エンジンが常にピークの熱効率で稼働するようにしています。これには、使用している燃料のオクタン価を判別できる高度に洗練されたストラテジーも貢献しています。

フェラーリV12モデルのオーナーが慣れ親しんだ極めて高水準のエンジンサウンドの伝統は守りつつ、同時にGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)を排気システムに導入して最新の排出基準に適合させるため、エンジニアは新しいエグゾースト・テールパイプを加えました。この異例の革新的設計ソリューションは、GPFの使用で弱められる中~高周波音を回復します。

優れた音響特性、パフォーマンス、美観を兼ね備えるために、テールパイプの外観は、すべてのフェラーリの特徴であるエレガンスを損ねない形で、その機能やサーキット生まれのキャラクターを強調しています。吸気ダクトにも手が加えられ、2組目のレゾネーターを装備したことで、特定の周波数が強まり、エンジンの点火順序による気高い倍音成分がさらに強化されました。こうしてエグゾーストからのサウンドと吸気システムからのサウンドの完璧な融合が実現しています。

812 Competizioneと812 Competizione Aは、いずれも7速デュアルクラッチ・ギアボックスを搭載します。そのパフォーマンスは新たな極限にまで押し上げられ、V12モデルに新しいシフトフィールをもたらしています。制御戦略のキャリブレーションによって、変速時間は5%短縮されました。ギアレシオは812 Superfastと同じですが、新V12エンジンの最高回転数が500 rpm引き上げられたことで、新モデルのシフトチェンジはいっそうスポーティーになりました。

パフォーマンスの向上に伴って、排出基準に準拠するための最終調整として、HELEシステムも進化しました。アイドリングストップを行う「Start&Stop」機能を備えるほか、一連のエンジンマップが排出量を低減するとともに、フェラーリV12の特徴的サウンドを低速走行でも維持します。HELEシステムをオフにすると、パフォーマンス走行向きのマップに戻り、電光石火のシフトチェンジによってレスポンスを最大化します。

新エンジンの30 cvのパワーアップがもたらす熱量の増加に対応するため、冷却システムも変更されました。その結果、フェラーリV12モデルで初めてシングル・フロント・エアインテークが導入され、ラジエーターに送られる冷却エアの量を最大に増やしています。冷却液の回路もすべて改良され、冷却効率が812 Superfastから10%向上しました。加えて、シングル・エアインテークは、エンジン吸気マニホールドの流体力学を改善して、吸気経路での充填ロスを最小限に抑えるよう、さらに最適化されています。

最後に、オイル流量の増加(最高30%増)と、車両にかかる縦・横の加速力増大に対応するため、エンジン・オイルタンクも再設計されました。新タンクの内部と容量の最適化によって、812 Superfastより1 kgのオイルを節約でき、812 Competizioneと812 Competizione Aは、必要なオイル量が現行V12モデルの中で最も少なくなりました。これは全体の車両重量にも貢献していることが最終分析で確認されています。


エアロダイナミクス

812 Competizioneのエンジン出力と最高回転数の上昇によって、放散すべき熱量も増えました。この新たな要求に応えるため、ラジエーターのサイズと重量は増加させずに、冷却エアフロー・マネージメントの効率が改善されました。

812 Superfastでは、中央の大型グリルの両サイドにエンジンのエアインテークを配置していましたが、812 Competizioneでは、シングル・エアダクトによる一体型ソリューションが採用されました。これによって、エンジンのラジエーター用インテークの横幅をシャシーが許す限り最大限広げることが可能となり、重量削減はもちろん、吸気プレナムへのロスが低減され、したがって燃焼室のロスも抑えられて、全体のパフォーマンスが向上しました。

ラジエーターから出る熱い空気の排出は、ボンネット中央の「ブレード」の両側にある排気口とフェンダーのルーバーを活用して改善されました。このエリアの冷却効率は特に優れているため、デザイナーはアンダーボディの開口部を減らして最適化でき、全体としてフロントのエアロダイナミクス効率に大きな恩恵をもたらしました。

これらの効果によって、エンジン油脂類の冷却効率は812 Superfastから10%向上しました。ボンネット・ブレードの両側にある排気口の形状は、812 Competizione Aがオープントップで走行中も適切に気流をマネージメントできるよう設計されています。高温の気流の列は、コクピットからそれてサイドボディに沿って流れ、最終的に車両の後流に合流するのです。

コーナーへの進入速度が高まったことで、制動力の向上も必要となりました。フロントで発生するダウンフォースやブレーキそのものの重量で妥協を避けるには、ブレーキの冷却が極めて重要です。ブレーキの冷却コンセプトは812 Superfastから完全に刷新されました。その中心となるのは、SF90 Stradaleでデビューした新しいフロント「エアロ」キャリパーで、鋳造キャリパーの内部にエアインテークが組み込まれています。

キャリパーとパッドの放熱は、バンパーの横に設けられた大きな開口部で取り込んだ冷却エアを一体型エアインテークに導き、そこからコンポーネント内に気流を分配して行います。当然ながら、このソリューションの成否は、ホイールアッセンブリー後方のキャリパー周辺まで気流がたどっていくルートにかかっています。そこで、ハブ周囲のフロント・サスペンションと、その部分のパイプ類や補機類周辺のレイアウトの最適化が図られました。こうした変更によって、ブレーキオイルの温度に大幅な低下が見られています。812 Superfastと比べると、作動温度は約30℃下がり、したがって長時間のサーキット走行でも、安定した制動力とブレーキフィールが保証されています。812 Superfastの整流板や特殊なダクトを排除したことで、重量を1.8 kg削減でき、「エアロ」キャリパーによる重量増加を相殺できました。

ブレーキのための2個のカーボンファイバー製サイド・エアインテークの間にはメイングリルがあり、エンジンとコックピットに冷却エアを供給します。左右のインテークは断面が正方形で、ブレーキの冷却と二重のエアカーテンダクトに分割されています。後者によって、バンパー側面にぶつかる強い気流を導いて、タイヤトレッドの外側部分で生じる乱気流の抑制に利用でき、これがバンパーの外縁部で発生するフロント・ダウンフォースを増強しています。

外部に目を向けると、フロント・エアインテークを挟み込むバンパーの側面はえぐられたような形状で、その下端が前方へと伸びてスプリッターの形を成しています。ホイールアーチには前方と後方に1か所ずつ開口部があり、気圧を下げてアンダーボディをさらに効率的に働かせます。乱気流はボンネット・ブレードの後方とフェンダーに設けられた排気口に送られて排出されます。

812 Competizioneのフロント・アンダーボディの開発では、熱流の最適化を重要な柱としました。ボンネットのルーバーとフロントフェンダーの排気口の存在によって、フロント・アンダーボディでは、ラジエーターから来る高温の空気を逃がす排出口のサイズを縮小できました。したがってアンダーボディのうち、開口部によってダウンフォース発生にマイナスの影響を受ける面積が減りました。その結果、フロントのダウンフォースレベルが高まり、いっそう力強い気流が車両のリアに到達するようになりました。

また、ブレーキシステムのモディファイによって、フロント・アンダーボディを再設計してタイヤハウス内まで拡張することが可能となりました。新レイアウトではフロントのロワー・ウィッシュボーン周囲の空間が開放されたため、ダウンフォース発生に利用できる表面積を広げられたのです。また、S字状のサイド・ボルテックス・ジェネレーターも挿入できました。これは、発生するボルテックス(渦状の気流)の横方向の広がりを強めるとともに、フロント・ディフューザーと相乗効果を上げるように、風洞で特別に開発されました。フロント・ディフューザーの形状も最適化され、812 Superfastを超えるダウンフォースを発生するだけでなく、キャリパーの冷却も改善されました。こうした数々のソリューションにより、パフォーマンスの大幅な向上がもたらされています。排気口の最適化は、フロントで増加したダウンフォース全体の30%に貢献し、新しいサイド・ボルテックス・ジェネレーターでさらに40%が上乗せされました。

812 Superfast同様、フロント・ディフューザーには、250 km/hを超えると開くパッシブ式可動エアロシステムを備えます。パネルが回転するとディフューザー機能を完全に失い、最高速度への到達が可能となります。

812 Competizioneの特徴的なテールエンドには、いくつもの革新的エンジニアリング・ソリューションが盛り込まれています。エグゾースト・レイアウト、ディフューザー・ジオメトリー、スポイラー容量、特許取得のリアスクリーン、バンパーのデザインです。アンダーボディの空力的気流を横方向に最大限広げるため、リア・ディフューザーは車体の全幅にわたるよう拡張されており、812 Superfastで見られたソリューションとは明らかに異なります。

サイレンサーとテールパイプは完全に再設計されました。バンパーの両側に各2本の円形テールパイプを配するクラシックなセットアップから、各1本のエグゾーストパイプに変わり、その形は前例のない縦に長い長方形です。これにはプラスの効果が二つあります。ひとつは、リア・ディフューザーの拡張にあてられる空間を最大限確保できること。もうひとつは、2010年代のF1マシンの典型的なソリューションだった、エグゾーストのガスとディフューザー領域のダイナミックな相互作用をロードカーに導入する可能性が開けることです。この構成では、エグゾーストパイプから吹き出す高温のガスが、カーブしながら突き出した外側のディフューザー・フェンスに作用して、フェンス末端に発生するボルテックスを増やします。これがディフューザーからの“冷たい”気流の勢いを強め、ダウンフォースが増強されるのです。全体として、リア・ディフューザーの開発によって増えたダウンフォース量は、812 Superfastに対する増加全体の25%を占めます。後流へのエグゾースト・ブローイングの効果を計算に入れると、比率は35%に跳ね上がります。一方、リアのアンダーボディは、リアのダウンフォース増加の10%に貢献しています。

ディフューザーのフォルムを空力的に開発した結果、車両のダウンフォース発生に特化したエリアを横方向に拡大できました。スポイラーは812 Superfastより高くなっただけでなく、車体のほぼ横幅いっぱいに広がり、ディフューザーとの完璧な空力的相乗効果を発揮するので、考え得る限り最大のダウンフォースがリアアクスルにかかります。また、リアフェンダーの新デザインもエアロダイナミクス性能に貢献しています。フェンダー頂点の後方が掘り下げられたことで、サイドボディに空力上の流路が生まれ、スポイラー外端に強い気流がぶつかるのです。

しかし何といっても注意を引くのはリアスクリーンでしょう。完全に閉鎖されたのはプロダクションカーとしては初めてで、エンジニアは前例のない空力ソリューションを追求できました。ここに装着する突き出した形状の3組のエレメントは、ボルテックス・ジェネレーターとして働きます。LaFerrari以降、プロダクションカーでこのタイプのボルテックス・ジェネレーターが使われるのは、フラットなアンダーボディでダウンフォース発生を最大化するためでした。しかし812 Competizioneでは、このソリューションをリアスクリーンに適用し、気流を曲げて、リアアクスルの圧力場のバランスを変更しています。

このボルテックス・ジェネレーターは、リアスクリーン表面のすぐ上を流れる気流の中に、強力な圧力勾配を部分的に作り出して、横断面にボルテックスを発生させ、リアスポイラーとディフューザーによるシステムの働きを強化します。このソリューションによって、気流の一部がスポイラーの両サイドへとそらされて発生ダウンフォースを増強し、ディフューザーの効率も高めるのです。特許取得のボルテックス・ジェネレーターだけで、812 Superfastに対するリア・ダウンフォース増加量全体の10%を担っています。

リアバンパーの側面には、リアタイヤのすぐ後ろに3本の水平なスロットが設けられ、ビジュアル上の新しい特徴となっています。F12tdfを思わせますが、その内部には3個のエアロフリックを使うシステムが隠れています。通常、車両の後流によって気圧の低いエリアができるため、リアタイヤから出る気流の一部は車両中央へと自然に引き寄せられる傾向があります。しかしこの新ソリューションによって、気流は3本の水平なスロットからバンパーに入り、内部のフリックで上へとそらされ、リアのダウンフォースに貢献するのです。

812 Competizione Aでは、ボルテックス・ジェネレーターを排除した影響を埋め合わせるため、左右のフライング・バットレスの間にブリッジエレメントが設けられています。気流を効果的にそらして無駄なくリアスポイラーへ流すよう緻密に最適化されており、812 Competizioneとほぼ同レベルのダウンフォースにまで回復できました。このブリッジの存在は、タルガタイプの車両につきものの空気抵抗の増加を抑えています。ブリッジが空力的なウィングとして働き、上面の気圧によって正の圧力場を作り出すので、リアスクリーン以降の流速が上がり、空気抵抗を低減するのです。

オープントップ時の乗員の快適性は、ウィンドスクリーンのヘッダーレールに組み込んだフラップで確保されました。強い二次的な気流はフラップで上へそれるので、車内が乱されることはありません。これによってコックピットは後ろまで空気の泡にすっぽりと包まれるため、乗員の頭部の後方エリアにも、不快感をもたらす過剰な気圧が発生しません。

左右のバットレスの間には2個の空力的な開口部が設けられており、サイドウィンドウを越えて入ってくる気流をマネージメントして特定のルートに従わせます。これはキャビン内の気圧を抑える意味でも、気流そのものを安定させる意味でも重要な要素です。この戦略によって、快適性が向上するのはもちろん、ルーフを開けたときにも気流が安定し、空力効率が高まるという二重の利点があるのです。


ビークル・ダイナミクス

812 Competizioneのパフォーマンス戦略で開発の柱となったのは、全体的パフォーマンスレベルの引き上げと、横方向ダイナミクスにおけるドライビング・プレジャーの向上、そしてスペシャルバージョンとしてのハンドリング特性の重視です。

812 Competizioneでは革新的コンポーネントやシステムが数多くデビューし、ビークル・ダイナミクスのパフォーマンス目標達成に貢献しました。具体的には、独立四輪ステアリングの初採用、サイド・スリップ・コントロール(SSC)システムのバージョン7.0への進化、専用の新ミシュラン・カップ2Rタイヤの開発などが挙げられます。

独立後輪ステアリングは、新しい電子マネージメントシステムによって、左右のアクチュエーターを同調させるのではなく個別に作動させます。この進化によって、各アクチュエーターが担うポジション制御の性能は大幅に向上し、反応時間が短縮されました。

このシステムは、リアアクスルのグリップ感を維持し、フロントのインプットに対して即座に反応するので、ステアリングホイールの指令に対するフロントアクスルのレスポンスが強調されます。また、操舵角の作動頻度の機能として、車両の横方向の動的レスポンスをより効率的にマネージメントします。

この新ソリューションは、SSCシステムの進化をもたらしました。SSCシステムは、社内で開発された全制御システムをまとめ、共通の動的制御言語を使って全システムの活動を統合し、効率性を高めています。「サイド・スリップ・コントロール」の7.0が統合するシステムには、電子制御ディファレンシャル(E-Diff 3.0)、トラクション・コントロール(F1-Trac)、磁性流体サスペンション・コントロール(SCM-Frs)、限界域でブレーキ圧による制御を行うFDE(マネッティーノのRaceとCT-Offで作動)、そして、電動式前輪ステアリングと電子制御式独立後輪ステアリングを統合するバーチャル・ショート・ホイールベース3.0があります。

車両をできる限り軽量化することにも特別な注意が払われ、その結果、総重量は812 Superfastから38 kg削減されました。主に貢献したエリアは、パワートレイン、駆動装置、ボディシェルです。エクステリアには幅広くカーボンファイバーを使用しました。代表的なものがフロントバンパー、リアバンパー、リアスポイラー、エアインテークです。

パワートレインの重量削減では、チタン製コンロッド、軽量化したクランクシャフト、12 Vのリチウムイオン・バッテリーが貢献しました。コックピットのデザインにも注意が払われ、カーボンファイバー製トリムの幅広い使用や軽量な高機能ファブリックの採用、遮音材の削減が行われました。スポーティーで軽量な鍛造アルミニウム製リムとチタン製スタッドも貢献しています。

フェラーリV12モデルとしては初めて、総カーボンファイバー製リムが選択肢に加わり、812 Superfastの軽量な鍛造ホイールより全体で3.7 kgの重量削減が可能です。空気の流路内部とスポークを航空宇宙分野由来の白い塗料でコートし、これが、極めて強力なブレーキシステムから排出される熱を反射・拡散するので、サーキットで酷使しても、安定したパフォーマンスが長時間にわたって保証されます。


スタイリング

エクステリア

812 Competizioneは完全に独立した個性を持ち、プロポーションとフォルムのバランスにおいて、812 Superfastとは非常に明確な違いがあります。エンジニアリング上の変更によって、フェラーリのスタイリング・センターは、まったく新しいニュアンスを生み出すことに成功しました。これは、アーキテクチャー・デザインや彫刻的フォルム、スポーティーな役割をさらに強化するスタイリングテーマを選んだからです。

812 Competizioneには目を見張る特徴が数多くありますが、そのひとつがボンネットです。横断するくぼみの中に装着したカーボンファイバー製ブレードは、実はエンジンベイからの排気口を隠す独自の手法であり、その表面積を増やしてもいます。デザインの観点では、フェラーリの以前のスポーツカーに見られたルーバーではなく、横断するエレメントを選んだことで、ボンネットがよりすっきりとした彫刻的な外観となりました。このテーマは、3次元的なリバリーのコンセプトとも捉えられ、ボンネットを横切る特徴的ラインが目印となっていたフェラーリの歴史的レーシングカーを思い出させます。

フロントエンドの空力上の変更を生かして、デザイナーは、限定仕様スペシャルにふさわしいアグレッシブなキャラクターに仕上げました。ノーズでは、非常にワイドなフロントグリルと、その両側の力強い特徴的なブレーキ用サイドインテークが、壮大なパワーを誇示しています。また、カーボンファイバー製スプリッターは、低くかがみ込んだ幅の広いスタンスを強調し、強力なロード・ホールディング能力をうかがわせます。

812 Competizioneのデザインで最も目を引く要素は、リアスクリーンが1枚の総アルミニウムパネルに変わったことです。その表面に取り付けられたボルテックス・ジェネレーターは、車体の空力効率を高めると同時に、彫刻的フォルムを強調するバックボーン的な視覚効果も発揮しています。このモチーフに加えて、ボンネットを横切るカーボンファイバー製ブレードも相まって、車両のボリュームに関する全体的な印象が変わりました。812 Superfastよりコンパクトに見え、力強いファストバックの印象が際立っています。また、リアウィンドウの排除で、ルーフとスポイラーの間に質感の継続性が生まれました。オーナーは、ひとつのグラフィックが全長にわたって途切れずに続くまったく新しいリバリーで、さらなるパーソナライゼーションを楽しめます。

リアスポイラーもいっそう力強く見えます。これは位置が高くなったことに加えて、そこに施されたデザインによって、テールが非常にワイドで、ほとんど水平に見えるからで、リアの存在感をさらに強めています。このエアロパーツの末端は、リアフェンダーのラインと交差して、フェンダーの筋肉質な外観を際立たせており、フェラーリ330 P3/P4といった名高いマシンを想起させます。フェンダーの頂点後部はボディワークが掘り下げられており、サイドボディとそのフォルムの3次元的なオリジナリティーを際立たせています。

テールライト・クラスターは、よりアグレッシブな挑発的ルックスです。スポイラーのすぐ下のスリットにシームレスにフィットして、リアの水平な印象に貢献しています。リアバンパーは特に彫刻的で、タイヤの高さにあるスクープを特徴とし、そこに2個の力強い排気口が組み込まれています。バンパーのアウト側には、タイヤの後方に3本の空力的なスロットが設けられ、ひと目でそれとわかるスタイリング上の特徴となっており、リアスクリーンのボルテックス・ジェネレーターのフォルムを想起させます。


コックピット

インテリアのアーキテクチャーに関しては、812 Competizioneは812 Superfastを忠実に踏襲しており、全般的パラメーターやメインのダッシュボード、ドアパネルのインターフェースのほか、ドアパネルの特徴的な“ディアパソン”のモチーフも変わりません。ドアパネル自体は、実際の重量だけでなくデザイン的にも全体に軽くなり、コックピットのスポーティーさを印象づけています。
ドアパネルのポケットは主要構造から突き出しているため、まるで宙に浮いているように見えます。これが軽さを感じさせ、キャビンの他の部分とのフォルムや質感の統一性を生み出しています。アームレストとして残っているのはドアハンドルとつながる小さな付加パーツだけですが、この部分がパネル上のダイナミックな筋肉となっています。

コックピットのまさに中央に配置されているのは、フェラーリの過去と未来をリンクする象徴的なシフトゲートのテーマで、そこに現代的なひねりが加えられています。このテーマがV12モデルに登場するのは初めてで、812 Competizioneのスピリットとフェラーリの伝統をよく反映しています。


812 Competizione A

812 Competizione Aは、フェラーリ・スタイリング・センターにとって、車両のリアに求められる変更を利用して真に忘れがたいアーキテクチャーを生み出す好機となりました。フェラーリの伝統として人気の高いフライング・バットレスのコンセプトは、ボンネット・ブレードが作り出すフロントの弓矢のテーマと苦もなく調和し、前方へと突き動かすイメージを車体に与えると同時に、クーペとはまったく異なるニュアンスも醸し出しています。

特に横から見ると、車両の重心が低くなったように見えます。これはルーフとラップ・アラウンド形式のウィンドスクリーンがサイドウィンドウに流れるように続いていることに加えて、リアのフライング・バットレスが812 Competizioneより低いためです。タルガトップを収納すると、ロールバーの一部はボディワークの他の部分より上に突き出しますが、カーボンファイバー製のため、ビジュアル上は二次的なエレメントになり、フライング・バットレスが生み出す横広がりの低いスタンスを損ねません。これがサイドビューをさらに低く見せています。

ルーフを閉じると、ロールバーとルーフ・ストラクチャーは完全に一体となり、シームレスなユニットを形作ります。タルガトップは、ロールバーとの美しい統一感を生み出すためカーボンファイバー製で、ルーフを開く際には、まったく同じ形のコンパートメントに収納します。いつでも格納できるため、どんな天候でも車両を存分に楽しめます。


7年間メンテナンス・プログラム

卓越した品質基準と、さらなるカスタマー・サービスの充実を目指すフェラーリでは、812 Competizioneと812 Competizione Aに7年間の純正メンテナンス・プログラムをご用意しております。フェラーリの全ラインアップを対象としたこのプログラムは、最初の車両登録から7年間にわたり、お客様のフェラーリのパフォーマンスと安全性が最高の状態で維持されるべく、すべての定期メンテナンスを保証するフェラーリならではのサービスです。この特別なサービスは、認定中古車を購入されたお客様にもご利用いただけます。

定期メンテナンス(20,000 kmごと、もしくは毎年1回。走行距離制限なし)では、「純正スペアパーツ」および最新の診断テスターを使い、マラネッロのフェラーリ・トレーニング・センターで研修を受けた有資格者による詳細な検査を受けていただけます。これは純正メンテナンス・プログラムの魅力のひとつにすぎません。このサービスは、全世界の市場で展開する正規ディーラー・ネットワークにてご利用いただけます。

マラネッロで製造された車両が誇る優れた性能と素晴らしさの維持を願うお客様に向けて、フェラーリはこれまで展開してきた幅広いアフターセールス・サービスに加えて、この純正メンテナンス・プログラムを導入し、さらなるサービスの向上に努めています。



812 Competizione 主要諸元

エンジン

タイプ

V12 - 65°
総排気量 6,496 cc
最高出力* 610kW (830 cv) @9,250 rpm
最大トルク** 692Nm / 7,000 rpm
最高許容回転数 9,500rpm
ボア & ストローク 94 mm x 78 mm

サイズ & 重量

全長 4,696 mm
全幅 1,971 mm
全高 1,276 mm
ホイールベース 2,720 mm
フロント・トレッド 1,672 mm
リア・トレッド 1,645 mm
乾燥重量** 1,487 kg
乾燥パワーウェイトレシオ 1.79 kg
重量配分 49 % フロント / 51 % リア
燃料タンク容量 92 L

タイヤ

フロント 275/35 ZR20; 10” J x 20”
リア 315/35 ZR20; 11.5” J x 20”

ブレーキ

フロント 398 mm x 223 x 38 mm
リア 360 mm x 233 x 32 mm

トランスミッション&ギアボックス

7速F1 DCT

電子制御

四輪独立ステアリング機能付きPCV 3.0(Passo Corto Virtuale – バーチャル・ショート・ホイールベース)、ESC、高性能ABS/EBD、F1-Trac、E-Diff3、デュアルコイルSCM-E、SSC(サイド・スリップ・コントロール)7.0

パフォーマンス

0-100 km/h 加速 2.85 秒
0-200 km/h 加速 7.5 秒
フィオラーノ・ラップタイム< 1分20秒
最高速度 340 km/h 以上

燃料消費/CO2 排出量

ホモロゲーション取得申請中(WLTCモード)


* 812 Competizione Aの主要諸元は後日発表

** エンジン出力は、国際単位系(SI)に従ってkWを用い、統一性からCVを並記。オクタン価98のガソリンを使用、動的ラム効果5 cv

*** オプション装備車